ネットを先端的な人たちだけが利用していた時期とは違い、今は一般的な人が普通にネットを見ている。こうなると、ネットを見ている時間が異常に長いことが問題となったりもする。
インターネットを「病的に使用」する−。そんなネット依存の疑いが強い中高生が全国で52万人もいるという。厚生労働省の研究班が中高生への調査を基に推計した。全国規模の調査に基づく数字が発表されたのは初めてだが、予想以上に深刻な事態だと言わざるを得ない。……
(「ネット依存 早めに専門機関へ相談を」(西日本新聞))
ネット依存は、ネットが一般化したことによる唯一の問題ではない。「ネットのバカ」(中川淳一郎著)を読むと、ネットには、見栄と承認欲求など人間の心理が渦巻いており、それにつけ込んで金儲けをしようとする欲で溢れており、多くの問題を抱えていることが分かる。
かつて梅田望夫氏は、ネットは個人をエンハンス(強化)するツールであると、言った。しかしながら、今やネットはリアルで実績を上げた者をエンハンスするツールとなっている。
芸能人は、自分のブログやFacebookで自身の私生活を記し、ページビューを稼ぐことで広告料を稼いでいる。作家は、FacebookやTwitterで新しく出版する本の告知をし、自身の本に関する感想がTwitterで呟かれれば、これをRTする。こうしてその本が話題になっているかのような雰囲気を作り出すことが出来る。つまり、リアルの場で実績を上げているからこそ多くのフォロワーを得ることができ、多くのフォロワーを使って情報をネット上で拡散することができる。こうした上方の拡散は、リアルの場での本の売り上げを大きくし、ますますフォロワーを増やす。こうしたポジティブループを作ることで勝者はどんどん強化されていく。そして勝者が全てを取るのだ。この構図に素人がネット上で成功する可能性は殆どない。
本書は、GREE や DeNAのような携帯ゲーム会社にも手厳しい。こうしたゲームは無料でも楽しむことが出来るが、お金を払えばレアなアイテムを手に入れることができる。ゲームにSNSの要素が加わると、レアアイテムを持っていることは、持たざる者に対する優越感(ステータス)となる。無料でゲームに参加することを許しているのは、レアアイテムを有料で買うものが優越感を持つために、それを持たざるものの存在が必要であるためだ。
著者の中川氏は、NEWポストセブンなどの各種ネットニュースで編集を行っている人間だけに、ネット利用者の反応をよく分析している。中川氏が、ネット上でアクセス数を稼ぐ内容を「ネットでウケる12ヶ条」として記している。
1. (読者が)話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
2. 身近であるもの、B級感があるもの
(中略)
8.美人
9.時事性があるもの
(略)
例えば、NAVERの”かわいすぎる”は、”美人”の典型例だろう。また、時事性がある者で言えば、今ならあやや結婚などが考えられる。
私自身ネットをよく使う人間であり、この中川氏のような勝者に踊らされている人間の一人なのだろうと思う。
- 作者: 中川淳一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/07/13
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