kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



「権力と権威」を読んで、インターネットが権威に与えた影響を考える

 権威あるものの言葉を引用して説得力を増そうとする。これは人にメッセージを出す際の常套手段だ。

年2%の物価上昇を目指すアベノミクスの大規模金融緩和は、円安による好ましくない物価高で終わる恐れがある。(中略)
 警戒すべき問題はほかにもある。 国際通貨基金IMF)のオリビエ・ブランシャール調査局長が今月、世界経済の新たなリスクとして、中国経済の次にアベノミクスを挙げた。財政再建努力なき財政出動を心配しているのだ。

(「毎日新聞 2013年7月28日 社説:アベノミクス 安定のための改革こそ」より)
IMFの調査局長が言ったんだから、アベノミクスはリスクなんだと言いたいわけだ。

 そもそも権威とはなんだろう? 権力とは違うのだろうか?

 権威とは何かについて記しているのが「権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理」(なだ いなだ著)は、権威も権力も 誰かにいうことをきかせる力だと述べている。ただし一般に思われているのとは違い、権威は受け手の依存心に立脚していると言う。上のIMFの例では、読者の”経済のことは良くわからないけど、IMFのいうことなら本当なんだろう”という正当性の判断を自分で行わず、IMFの言うことを鵜呑みにする態度が、IMFの権威の源となっている。
 つまり、”自分で考える答えより、この人の言葉の方が正しいんだろう”という態度が相手に権威を付ける。こう考えると、相手のことを良く知らないほど権威を感じることが分かる。身近な親などよりも、TVでしか見ない評論家の方に権威を感じるのだ。


 さて、「権力と権威」の知見をもとに考えてみる。近年、インターネットによって情報が増えて、権威を感じることも少なくなってきている。一方で、インターネットの口コミという新たな権威も生まれているように思う。レストランの情報や買い物の情報など、自分で選ぶよりも他人の情報をつい優先してしまう人がいるからだ。NAVERまとめのような”まとめ情報”にも権威が付き始めているように感じる。また、はてなブックマークにも依存心を感じることがある。読めばすぐ理解できる内容なのにブックマークがたくさんついている記事を見ると、ブックマークが多くついているから良い記事なんだろうと思い、ブックマークを自分も付けているのではないだろうか。これこそ、自分の頭で考えずに、自分で考えるよりももっと良い物があると考える依存心の現れではないかと感じる。

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)

権威と権力――いうことをきかせる原理・きく原理 (岩波新書 青版 C-36)