製造業が不振だ。これと対照的にサービス産業の元気が良い。そんなこともあり、ビジネスモデルの研究が盛んだ。
従来、例えば、マイケル・ポーターは、競争戦略をコスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つに類型化した。これらは、ビジネスモデルの古典と言えよう。古典的なビジネスモデルは、何らかの競争優位を得るためのポジションを得ることを目指す。ところが、最近の統計によると、競争優位のポジションを得ても、その競争優位は長続きしないことが分かっている。素敵な技術で立ち上がった輝かしいベンチャー企業が、数年後には輝きを失っていることを振り返れば、競争優位が長続きしないことが分かる。
競争優位が長続きしない、この現実に対処する方法を示しているのが、「競争優位の終焉」だ。
本書の主張は、主に3点。
- 市場セグメントを小さく分け(アリーナ)、アリーナ毎に新規参入・活用・撤退の戦略を考える。
- 新規参入、活用、撤退のフェーズ毎に、必要となる才能が異なる。一方、企業に利益をもたらすのは活用フェーズである。しかしながら新規参入(という利益をもたらさないフェーズ)があっての活用フェーズである。新規参入フェーズに必要な才能を持つ人材を、利益をもたらさないという理由で、冷遇してはならない。撤退フェーズも同様。
- 活用フェーズのマネージャは、ビジネスリソース(人・モノ・金)を占有しようとする。しかしながら、競争優位は長続きしない故、ビジネスリソースをそのマネージャに占有させない仕組みと文化が企業には必要である。
つまり、細かくアリーナの新規参入・活用・撤退を繰り返す仕組みと文化が企業に必要なのだ。そんな企業で働く従業員に求められるのは、次々とアリーナを替えて働くことのできる柔軟性である。その柔軟性を支えるのは、自分は何でもできるという自己肯定能力と、新しいスキルを学ぶ学習能力だ。
- 作者: リタ・マグレイス,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/06/19
- メディア: 単行本
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