ワインは「会話を誘導できるお酒」
(「ワインの科学」,Bluebacks,清水健一著)
ワインは多様です。その多様さ故に、「会話を誘導できるお酒」なのです。つまり、話のネタの宝庫ということです。
ワインの産地は、フランス・イタリアのような有名どころに加えて、オーストラリア・アメリカ・チリ・アルゼンチンなど様々な国で作られています。ワインの原料であるブドウの品種も多い。代表的なものだけでも、カベルネ、メルロー、ピノ、シラーズ、シャルドネ、ソーヴィニヨン、リースリングなど多くを挙げることができます。また、ブドウの出来は毎年異なるため、同じ地方のワインでも毎年その出来が異なるとされている。そえゆえ、いわゆるビンテージというものができます。さらに、赤ワイン・白ワイン・スパークリングワインというように出来あがたったワインの種類そのものも違いがあります。
これらのバリエーションの多さからか、様々な誤解や都市伝説がワインにはあります。例えば、ワインは寝かすほど美味しくなる、といったものがあります。これらの誤解や都市伝説は、ワインの解釈の多様性を広げています。この手の誤解・都市伝説は、評論家と呼ばれる人たちがより新奇な(つまりより注目されるであろう)説を述べようとする努力により広がるのでしょう。
先日、山梨県のワイナリーを巡ったのをきっかけに、私はワインに興味を持ちました。ワインについて、ネットで色々調べることも多くなりました。しかし、ネットの記事は、誤解・都市伝説の類が多く混ざっていること、断片的な情報であることから、分かりづらいものです。そこで、ワインに関する本を読むことにしました。ワインの本には、大きく分けて二つのジャンルがあります。
- 美味しいワインを紹介する本(そのワインを作った人・地方の物語も記される場合も多い)
- ワインの製法・歴史について紹介する本
ここでは、後者について紹介します。
1冊目は、『「ワインの科学」,Bluebacks,清水健一著』。これは、ブルーバックスらしく、なるべく科学的にワインを説明しようとした本です。「科学的」の意味は、なるべく確認されている事実に従って、ワインを説明しようとしているということです。
例えば、開封したワインは酸っぱくなるという誤解について、説明しています。まず、ワインの味の変化の要因は、(1)酸素による酸化と、(2)微生物による発酵(あるいは腐敗)にあることを記した後、ワインが酸っぱくなるのは(2)の微生物による発酵であり、冷蔵庫に保存したワインでは起こり得ないと説明しています。わかりやすいですね。開封したワインが全て酸っぱくなるわけではなく、酸っぱくなるのは常温で置いた場合に限られることがわかります。
また、ワインの様々な製法を、その効果とともに記しています。これを読めば、お店でワインを選ぶのに困ることがなくなります。
- 作者: 清水健一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/01/20
- メディア: 新書
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2冊目は、『「ワインづくりの思想」、中公新書、麻井宇介著』。これは、ワインづくりをしていた麻井氏が、世界のワインの製法・ブドウ品種の変遷を説明した本です。ワインづくりに、科学が持ち込まれた影響がわかります。
何事も同じですが、科学による合理的にワインが造られると、その目的は最適化となります。つまり、美味しいワインを安定的に作るために最適な製法が確立します。世界中のワイナリーが「美味しいワイン」を目指して製法を合理化する結果、各地のワインが個性を失っていきます。合理化とは単一化であります。その結果、フランスのボルドーのワインも、カリフォルニアのワインも「美味しく」なって、似たものとなっています。
この一連の流れから、ワインにまつわる誤解、特にテロワールに関して著者の意見が展開されていきます。
- 作者: 麻井宇介
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/11/08
- メディア: Kindle版
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まとめ
小難しいことを考えず、美味しくワインを頂く、それで良いのです。
さらに知識があれば、ワインを理解することができ、一層ワインを楽しむことができます。だって、『ワインは「会話を誘導できるお酒」』ですから。