kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



「読まずに死ねない哲学名著50冊」は、流れで哲学を知る本

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 久しぶりにこの本を読み返した。時間をかけてじっくりと。

 この本は、表紙とタイトルで損をしていると思う。見かけの印象以上に良い本だ。

読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書)

読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書)

  • 作者:平原 卓
  • 発売日: 2016/03/06
  • メディア: 新書
 

 

 女子高生風のイラストの描かれた表紙は、分かり易い所だけつまみ食いした読み応えの無い本をイメージさせる。しかしこの本は、少し難しくても大切なところはしっかり書いている。ネットで、分かりづらいという感想を見かけるのは、”子供でも分かる哲学”と思って本書を読んだためだろう。これは、大切なことをしっかり読みたいという人向きの本だ。

 

 「読まずに死ねない哲学名著50冊」というタイトルももったいない。この名著50冊の選び方がとても良い。それらは時代ごとに選ばれていて、哲学の関心が時代とともに変わっていく流れが良く分かる。時代背景や因果関係の流れを知ることは大切だし、面白い。本のタイトルがこの面白さを表現しきれておらず、もったいない。

 流れを追う大切さについて、例えば人類社会について言えば、人が伝染病の脅威に脅かされるのは、人類が狩猟生活から農耕生活に移って定住生活を始めたからだ。定住生活により人は家畜を飼うようになり、鳥や豚を密集した状態で育てるようになった(鳥インフルエンザ、豚コレラを思い出そう)。

 また、ルターの宗教改革が起こったのは、グーテンベルク活版印刷を発明したからだった。印刷が無かった時代は聖書を持っていたのはごく一部の聖職者のみであり、聖職者の腐敗(例えば贖宥状の販売(人々の罪をお金で許す証書))を指摘できなかった。それが印刷により聖書を民衆が持てるようになると、腐敗した聖職者と聖書の矛盾を指摘できるようになった。

 あるいは、AKB48は、インターネットが普及したため登場した。インターネットで音楽CDが売れなくなった(音楽データをインターネットで無料共有したり無料配信したりするようになった)ため、CDを売る以外の方法として握手会やチェキの販売をする、いわゆる身近に会えるアイドルとしてAKB48は始まった。また、楽曲のイントロが短く、楽曲の長さ自体も短くなっているのは、スマートフォンで音楽を聴くようになったためだ。スマホではどんどん飛ばしながら音楽を聴くスタイルになっているためだ。

 

 哲学の流れをこの本から知ることができる。

 そもそも哲学は「良い生き方」とは何かを知ろうとしてきた。良い学校に入って、良い大学に入って、儲かる会社に就職するばかりが良い生き方ではないのは、みんな知っているだろう。では、良い生き方って何だろう?と皆知りたくなるだろう。

 その流れを大きく変えたのが、ジャック・デリダ。「良い生き方」とはなんだ?と心理を求めていた人々に対して、真理なんてものはないことを示した。脱構築だ。ポストモダン思想の始まりだ。ポストモダン思想は、ある種の皮肉な態度と絶望と繋がっている。

 流れで哲学を眺めると、今の思想がどう生まれてきたのか分かてくる。