受け手に対しても読み手に対しても、従って、まず要求されるのは表面に留まる強さです。作品の表面を理解することなしに意味や内容で即席に理解したようなふりをすることを拒否する強さです。
(「小説のストラテジー (ちくま文庫)より)
これは、初めて読んだときによくわからなかった部分だ。「小説のストラテジー」は文学が芸術たる理由を述べた名著だ。ただし、本気で読むことを要求する本で、分かりやすい本ではない。
宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」の感想を漁っていると、
- 宮崎駿監督がこの映画を作った理由の推測
- この映画に込められたメッセージの推測
をよく見かける。
上の「表面に留まる強さ」とは、映画で言えば、映像で描かれている映像表現のみを見て、その意図や制作経緯などには踏み込まないということだろう。
意味や内容を理解することは本質的に困難である。それでいて分かったつもりになりやすい。私たちは理解するためのテンプレートと、典型的で汎用的な回答がある。どのような作品であっても、それに当てはめれば意味や内容を記述することはできる。しかし、それは汎用的でどの作品にも言えるステレオタイプなものとなりやすい。つまり、知らず知らずに「意味や内容で即席に理解したようなふり」をしてしまう。
#Web記事に対して内容を読まずにコメントする人のなんと多いことか
分かったつもりにならないためには、見たもの・読んだものをあるがままに認識することが必要だ。そしてそれは困難なことでもある。