kotaの雑記帳

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小説「誰もが知ってる小さな国」(有川浩)の感想:コロボックルシリーズの続編

(AI(Microsoft Image Creator from Designer) で生成 ∙ 2024年8月1日 午前9:11)

 

 佐藤さとるが執筆したコロボックルシリーズは、完結時に「オープンエンド」と称し、ルールさえ守れば誰でも続きを書いて構わないとしてきた。そして、2015年に有川浩が書いた続編が、この「誰もが知ってる小さな国」です。

 この小説のタイトル「誰もが知ってる小さな国」は、佐藤さとるが執筆した「誰も知らない小さな国」を意識してつけたことは容易に想像できます。そして、秘密の存在であるコロボックルの国を、誰もが知っている小さな国としてストーリーを展開していく筆力は素晴らしいと思いました。

 小学生から知り合いの男女、ヒコとヒメの甘すぎない恋愛も、おとぎ話の側面のあるコロボックルの物語にはちょうど良い。

 

 最も印象に残った部分は、知的障害のあるミノルに、そのいとこのトオルが発した言葉です。ミノルは穏やかで良く笑う人柄で話すのもゆっくりです。対してトオルは、東京のTV局に勤めて、見栄っ張りで口が悪い。二人は子供のころは一緒に暮らしていました。以下の二つの部分は、トオルの言葉にヒコの心が波立つシーンです。

「よかったな、ミノル。おまえ、友達なんていたんだなぁ」

あっけらかんとした声には、たぶん悪気はひとかけらも含まれていなかったのだけど、ぼくは、その声を聞いて、気持ちがざらっとした。

「トシオちゃん、僕のこと好き?」

「ああ、好きだよ。だっておまえはかわいそうだからな。優しくしてやらないと」

ミノルさんはうれしそうにニコニコしていたが、僕はちょっともやもやしてしまった。

 

 「かわいそう」という言葉は、他人の不幸に対して同情や憐れみを感じる際に使う言葉ですが、ここでヒコの心が波立つのも、ヒコはミノルを不幸だとは考えていないからだと思います。

 そもそも、ミノルが不幸か幸福かは、ミノル本人が決めることであって、他人のトオルが決めることではない、と私は感じます。

 

まとめ

 有川浩の「誰もが知ってる小さな国」を読みました。

 タイトルの「誰もが知ってる」という部分に対するストーリー展開が素晴らしいと思います。

 また、「かわいそう」という言葉は、当事者が不幸であると感じたときにしか使ってはいけない言葉だと思いました。