間違ったとき、君はどうするか? 間違っていたことに気づいたとき、君はその過去をどうするか?
「空の中」は間違った者が、許されようと行動する。その行動が織りなす物語である。
この中で巨大未知生物の出てくるが、これは話の中心ではない。ストーリ設定の舞台である。この舞台上で出演者は夫々の間違いとその後を生きる。
白川真帆は、自分の間違いを母親に非難され、その許しを得るために巨大未知生物を滅ぼそうとする。母親の非難は母親の間違いであり、許しを過ちを求めること自身にもはや意味がない中で。
「母に言っても意味なんかないわ、喋らないんだもの!私が今までどれだけ謝ったと思っているの!?起こったままで固まって私を許そうとなんかしないのよ!仇を討つ以外どうしろって言うの!?」
「そらぁ、お母さんはよう許さんわ」
宮田は当たり前のように言った。
「お母さんが間違うちゅうがやき。間違うちゅうほうが間違うてないほうを許したりはできんろうがね」
母に許して欲しかった真帆。真帆がすべきは間違った母を許すことであった。
瞬は、父親を事故で失った。その後しばらくして、小さな未知生物フェイクを拾い育てる。ある日、巨大未知生物が父親の事故の原因であり、それとフェイクは同一種族であることを知る。父親を失った傷の癒えぬ瞬は、間違いと知りつつ八つ当たりでフェイクに仲間を襲うよう命令する。その間違いを正すために瞬は行動する。
「俺、フェイクに仲間を殺せって言ったんだ。佳江を助けろって、助けるために仲間を殺せって。間違っているのわかっててそう言ったんだ。八つ当たりでフェイクに仲間を殺させたんだ。フェイクは俺のために仲間を食べてるんだ。」
「あの人の言うことは間違ってるけど、間違った方でどんどん押し進んだら、一周して正解に着くかもしれないって」
間違いを抱える瞬と真帆はともに行動する。彼らの行動は間違いを正すことはできるのか?
瞬の祖父的な存在である宮じいは優しく厳しい。
一度間違えたことを正解にすることはできるのかと聞かれて
「そらぁ、無理よ」「いっぺん間違うたことは間違うたことよ。それは人間がごまかしても、世の中とか道理とかそういうもんが知っちょらぁ。それが間違いじゃとね。どれだけ上手にごまかしちょっても、後になったら間違うちゅうもんは間違うちゅうと、ちゃんと分ってしまうもんよね。」
間違えた瞬は救われる道はないのだろうか?
「間違うたことを正しかったことにしようとしたち、いかんわえ。神様じゃないがやき、あったことをなかったことにはできん」「間違うたことは間違うたと認めるしかないがよね。辛うても、ああ、自分は間違うたにゃあと思うわんとしょうがないがよ。」「間違うことをごまかしたらいかんがよね。次は間違われんと思いながら生きていくしかないがよ。」
まとめ
「空の中」は、間違った者が許されようと行動し、それらが織りなす物語である。間違いを正そうとして、間違いを重ねる。宮じいは言う
「ごまかそうとすればするほど後の揺り戻しはひどうなるわね」
彼らの行動は揺り戻しを大きくしていく。
最終章「最後に救われるものは誰か」で、誰が救われるかはお楽しみ。