「知らないと恥をかく世界の大問題」(池上彰)は、池上さんらしい。分かりやすい本です。
本書で、取り上げている個々の「世界の問題」もさることながら、(1)大きな視点で見たとき、「世界の問題」はどういった流れになっているのか、という大きな記述、(2)個々の問題の詳細についての面白情報の二つが記されていて、役に立ち面白い。
私たちも、「世界の問題」を毎日ニュースで見ています。しかし、個別のニュースを見ていても、そのつながりや根底にある共通問題がなかなか分かりません。本書では、世界におけるアメリカの一極集中体制の崩壊、次の覇権国はどこか? というストーリの中で、「民族」「宗教」「資源」というキーワードを示しています。こういった大きな視点でのストーリ・キーワードを知ると、今後ニュースを見るときに理解しやすくなります。
また、本書は、ミクロな視点で、個々の問題の詳細における面白情報も示しています。これは、雑学を得るのに役に立ちます。例えば、アメリカの政党に関して
両党の政策の違いについて少し詳しく説明すると、共和党は「アメリカさえ良ければいい」という”一国主義で、民主党は「アメリカの国益を守るために世界の中でどうしたらいいか」を考える国際協調路線です。
なるほど、こういうことを知っておくと、アメリカ大統領選のトランプ氏の発言(例えば、移民を拒否する)は「アメリカさえ良ければいい」という、共和党らしいものであることが分かります。
他の例では、アメリカの国民皆保険制度について次のように書いています。(太字は私が記す)
2つ目はアメリカに国民皆保険制度がないことがあげられます。今、オバマ大統領が国民皆保険化を目指して奮闘中です。アメリカは皆保険制度をとっていないので、個人で医療保険に入らなければなりません。だから、入っていない人も多い。皆保険制度をとると、アメリカの医療保険を取り扱っている民間の保険会社が自分たちの市場が荒らされるので反対しているのです。
要するに、アメリカでは民間の医療保険会社が反対するので、公的な医療保険制度を作れない、と言っています。ひどい話だなっと思います。
この話を頭に置いておくと、アメリカで何かが反対されるとき、それはだれかが儲からなくなるから反対されているのだと疑うことができます。一般のニュースでは、別の理由(例えば アメリカは個人責任の国だから等、哲学的理由)で反対理由が説明されるので注意が必要です。
まとめ
私は、当初は本書のタイトル「知らないと恥をかく」という部分が俗っぽくって敬遠していました。
しかし読んでみると、本書は、池上さんらしい、わかりやすく・面白い本でした。それは、「世界の大問題」を大きな視点で見たときのストーリ・キーワードを示していることと、個々の「世界の問題」をミクロに見たときの面白情報、この両方を示しているためです。
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 新書
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