知っていれば、もっともっと楽しめる
あなたは、絵を見に行くことはありますか? 実のところ絵のことはよく分からない、 これははそんな人のための本。
スポーツで考えてみよう。
- ラグビーの試合を見ていて、その迫力は分かるけど何をやっているのか良く分からない。
- フィギュアスケートの演技を見ていて、3回転ジャンプの難しそうなことは分かるけど、実のところ転んだか成功したかくらいしか分からない。
- テニスの試合を見ていて、打ち合いの迫力は感じるけど、試合の流れは分からない。
こんな経験は有りませんか?感覚的に凄さは分かるんだけど、知識が無いからそれ以上のことが分からない。そんな感じありますよね。
スポーツ観戦をするときにそのスポーツの経験者と一緒に見ると、色々と解説してくれたりしますよね。その解説をしてくれる人って、すごく楽しそうでうらやましい。知識があると、スポーツ観戦が一層楽しめます。
絵も同じです。絵の良し悪しなんて感覚で決めれば良いのですが、もし知識があればもっと絵を楽しむことができます。
本書は、そんな絵を見るための知識(ポイント)をまとめた本。私は、これ以上にまとまった本を見たことがありません。
絵には二つのタイプがある
絵には二つのタイプがあります。主役(フォーカルポイント)のあるものと、無いものです。
主役のある例は、例えば肖像画。描かれている人が絵の主役。
主役のある絵の典型は、絵のど真ん中にドーンと大きく主役が描かれているパターン。ただ、これには欠点があって、単調になりがちです。そこで、主役を二つにしたり、三つにしたりと工夫がされています。
ひっそりと隠された意図、線を追いかけよう、リーディングライン
画家は、何らかの意図を線にひっそりと込めています。リーディングラインと呼ばれるもの。
リーディングラインを探して、追いかけていくと絵を楽しめます。
上の絵では、真ん中に赤い布をまとった女性(ガラテア)が描かれています。その上に天使が3人飛んでいて矢を下に向けています。矢の向いた先を見ると、ガラテアに集中しています。これがリーディングライン。さらに、左上に矢を構えていない天使ますよね、この視線を追うとやはりガラテアに向かっています。
絵を下から見ていくと、最後に絵の上部の天使を見ることになります。そこで、リーディングラインに視線がひっぱられて、再び絵の真ん中を見ることこの絵はなっています。こうやって、絵から目が離れないように画家は工夫しているのです。
バランスの問題
絵の真ん中に主役をドーンと書くと、絵のバランスとしては完璧、でも単調な絵になります(肖像画をたくさん見ていると、どれも同じだなぁって思ったことはありませんか?)。そこで、主役を端に寄せて描くのですが、今度はバランスが狂ってきます。バランスを取るためには、反対側に何かを描く必要があります。
バランスを取るために何を描いているのか?これを探しながら絵を見ると、画家の工夫が分かって楽しい。
上の絵では、主役の男性を絵の左側に書いています。そのため、バランスを取るためには右側に何かを描く必要があります。何でバランスを取っているか分かりますか?実は、地面の石がめくれているところでバランスを取っています。これを指で隠すとバランスがと悪くなることが分かります。
絵を見る技術の全項目
これ以外にも様々な技術が紹介されています。それらを簡単に記しておきます。
フォーカルポイントの探し方
彩度、コントラスト、大きさで探す
リーディングラインが集まる場所で探す
二つ以上のフォーカルポイントがある場合
フォーカルポイント間の関係性をどう表現するか
キャンバスの角を避ける
ストッパーを置く
リーディングラインで絵から視線をとどめる
リーディングラインで周回させる
リーディングラインで水平(縦)方向にジグザグさせる
S字カーブを描く
フォーカルポイントから放射状にリーディングラインを出す
絵の雰囲気と構造線
フォーカルポイントの骨格を構造線として読み取る
構造線が縦(堂々とした感じ)、斜め(動きのある感じ)、横(落ち着いた感じ)
S字を描く構造線(柔らかな感じ)
バランスを取る
構造線を支える補助線
左右のバランスを取るために、わき役を置く
色を読み取る
色相・彩度・明度
絵の構造
マスターパターンを探す(等分割パターン、三分の一の法則、直交パターン)
形の反復
主要ポイントの一致
傾きの一致
まとめ
この本では、絵を見る時のポイントが紹介されています。これは、ニュースを読むときのフレームワーク(スキーム)の5W1Hと同じ。ニュースを読むときのフレームワーク(スキーム)。誰が、どこで、何を、誰に、いつ、どうやって、この6つを意識しながらニュースを読むとしっかり理解できます。これと同様に、絵を見るためのフレームワーク(スキーム)がフォーカルポイント、リーディングライン、バランス等々。
デザインや写真の業界でも、これらのフレームワークは応用されており、この本を読むと、絵だけでなくデザインや写真を見る時にも役に立ちまう。
また、写真を上手に撮れるようになるには、人の写真を見て勉強するのが最適なのですが、どう見て良いのか分からない人も多いでしょう。そんなときは、この本を読むと、写真の見方が分かります。
これは、久しぶりに夢中で読んだ本です。3回繰り返し読みました。