kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



「絵を見る技術」(秋田麻早子):絵を見るポイントのまとまった本

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

絵を見る技術 名画の構造を読み解く

 

 

知っていれば、もっともっと楽しめる

 あなたは、絵を見に行くことはありますか? 実のところ絵のことはよく分からない、 これははそんな人のための本。

 

 スポーツで考えてみよう。

  • ラグビーの試合を見ていて、その迫力は分かるけど何をやっているのか良く分からない。
  • フィギュアスケートの演技を見ていて、3回転ジャンプの難しそうなことは分かるけど、実のところ転んだか成功したかくらいしか分からない。
  • テニスの試合を見ていて、打ち合いの迫力は感じるけど、試合の流れは分からない。

こんな経験は有りませんか?感覚的に凄さは分かるんだけど、知識が無いからそれ以上のことが分からない。そんな感じありますよね。

 スポーツ観戦をするときにそのスポーツの経験者と一緒に見ると、色々と解説してくれたりしますよね。その解説をしてくれる人って、すごく楽しそうでうらやましい。知識があると、スポーツ観戦が一層楽しめます。

 

 絵も同じです。絵の良し悪しなんて感覚で決めれば良いのですが、もし知識があればもっと絵を楽しむことができます。

 本書は、そんな絵を見るための知識(ポイント)をまとめた本。私は、これ以上にまとまった本を見たことがありません。

 

絵には二つのタイプがある

 絵には二つのタイプがあります。主役(フォーカルポイント)のあるものと、無いものです。

 主役のある例は、例えば肖像画。描かれている人が絵の主役。

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主役のある絵:モナ・リザ https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mona_Lisa,_by_Leonardo_da_Vinci,_from_C2RMF_retouched.jpg より

 

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主役の無い絵:ハドソン川の銀色の光 http://internetmuseum.web.fc2.com/sub260Tonalism/sub260-bb-LeonDabo/260-bb-0071.jpg より

 

 主役のある絵の典型は、絵のど真ん中にドーンと大きく主役が描かれているパターン。ただ、これには欠点があって、単調になりがちです。そこで、主役を二つにしたり、三つにしたりと工夫がされています。

 

ひっそりと隠された意図、線を追いかけよう、リーディングライン

 画家は、何らかの意図を線にひっそりと込めています。リーディングラインと呼ばれるもの。

 リーディングラインを探して、追いかけていくと絵を楽しめます。

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リーディングラインの集中:By ラファエロ・サンティ - The Yorck Project (2002年) 10.000 Meisterwerke der Malerei (DVD-ROM), distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=157674

 

 上の絵では、真ん中に赤い布をまとった女性(ガラテア)が描かれています。その上に天使が3人飛んでいて矢を下に向けています。矢の向いた先を見ると、ガラテアに集中しています。これがリーディングライン。さらに、左上に矢を構えていない天使ますよね、この視線を追うとやはりガラテアに向かっています。

 絵を下から見ていくと、最後に絵の上部の天使を見ることになります。そこで、リーディングラインに視線がひっぱられて、再び絵の真ん中を見ることこの絵はなっています。こうやって、絵から目が離れないように画家は工夫しているのです。

 

バランスの問題

 絵の真ん中に主役をドーンと書くと、絵のバランスとしては完璧、でも単調な絵になります(肖像画をたくさん見ていると、どれも同じだなぁって思ったことはありませんか?)。そこで、主役を端に寄せて描くのですが、今度はバランスが狂ってきます。バランスを取るためには、反対側に何かを描く必要があります。

 バランスを取るために何を描いているのか?これを探しながら絵を見ると、画家の工夫が分かって楽しい。

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意外なものでバランスを取る:嘆きの壁 https://publicdomainq.net/jean-leon-gerome-0022168/

 

  上の絵では、主役の男性を絵の左側に書いています。そのため、バランスを取るためには右側に何かを描く必要があります。何でバランスを取っているか分かりますか?実は、地面の石がめくれているところでバランスを取っています。これを指で隠すとバランスがと悪くなることが分かります。

 

絵を見る技術の全項目

 これ以外にも様々な技術が紹介されています。それらを簡単に記しておきます。

 

フォーカルポイントの探し方

 彩度、コントラスト、大きさで探す

 リーディングラインが集まる場所で探す

二つ以上のフォーカルポイントがある場合

 フォーカルポイント間の関係性をどう表現するか

 

キャンバスの角を避ける

 ストッパーを置く

リーディングラインで絵から視線をとどめる

 リーディングラインで周回させる

 リーディングラインで水平(縦)方向にジグザグさせる

 S字カーブを描く

 フォーカルポイントから放射状にリーディングラインを出す

 

絵の雰囲気と構造線

 フォーカルポイントの骨格を構造線として読み取る

 構造線が縦(堂々とした感じ)、斜め(動きのある感じ)、横(落ち着いた感じ)

 S字を描く構造線(柔らかな感じ)

 

バランスを取る

 構造線を支える補助線

 左右のバランスを取るために、わき役を置く

 

色を読み取る

 色相・彩度・明度

 

絵の構造

 マスターパターンを探す(等分割パターン、三分の一の法則、直交パターン)

 形の反復

 主要ポイントの一致

 傾きの一致

 

 

まとめ

 この本では、絵を見る時のポイントが紹介されています。これは、ニュースを読むときのフレームワーク(スキーム)の5W1Hと同じ。ニュースを読むときのフレームワーク(スキーム)。誰が、どこで、何を、誰に、いつ、どうやって、この6つを意識しながらニュースを読むとしっかり理解できます。これと同様に、絵を見るためのフレームワーク(スキーム)がフォーカルポイント、リーディングライン、バランス等々。

 デザインや写真の業界でも、これらのフレームワークは応用されており、この本を読むと、絵だけでなくデザインや写真を見る時にも役に立ちまう。

 また、写真を上手に撮れるようになるには、人の写真を見て勉強するのが最適なのですが、どう見て良いのか分からない人も多いでしょう。そんなときは、この本を読むと、写真の見方が分かります。

 

  これは、久しぶりに夢中で読んだ本です。3回繰り返し読みました。