kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



分かりづらい「相対的貧困」について調べてみた

 ”日本では7人に1人が貧困に苦しんでいる”。こういったセンセーショナルなフレーズをよく耳にする。しかし、どうもピンとこない。自分の肌感覚に合わないからだ。

 以下の記事を読んで”7人に1人が貧困”の意味と、肌感覚に合わない理由が分かった。貧困の定義には二つあって、

www.financepensionrealestate.work

 

つまり、”7人に1人が貧困”というのは、相対的貧困の話だったのだ。

 

日本の相対的貧困を他国と比べるのは危険

 次に、相対的貧困について調べてみた。

相対的な基準を用いると、一定の計算式によって貧困か否かが判断されるため、判断者による恣意が入り込む余地は少ないものとなる。しかし、平均値との比較によって判断するため、国全体が貧しい場合には絶対的に見て相当貧困な状況にあっても、貧困でないとされる場合がある。また、ある発展途上国の貧困でないものは、ある先進国の貧困者よりずっと貧しい、ということにもなる。 

         (貧困 - Wikipedia より、太字は私)

 

つまり、相対的貧困について、日本と海外とを比較するのは危険ということだ(統計一般に、海外と比較には注意を要するというのがリテラシーだけど)。例えば、日本では世帯収入が300万円あると貧困ではないが、世界には世帯収入が400万円あっても貧困とされる国があるかもしれない。

 

子供の貧困に関心が集まっている

 相対的貧困について調べていて、もうひとつ気づくのは、相対的貧困と子供の貧困をリンクした記事の多いことだ。

今、わが国の実に7人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれています。日本における「子どもの貧困」とは「相対的貧困」のことを指します。

    (子どもの貧困対策 | 日本財団 より)

 

子供にとって相対的貧困の何が問題かというと、誰かが出来ていることを自分はできないと感じることが自己肯定感を下げる、ということのようだ。

 

学習塾に通わせてあげられない、習い事に行かせられないなど、他にもさまざまな面で「できない」ことが挙げられています。

こういったことはたしかに、途上国の貧困のように、ただちに命に関わる問題ではありません。

しかし、現代の日本で問題となるのはそこではないのです。重要なのは、「周りの友達はそれができているのに、自分にはできない」という環境です。

 
「自分だけできない」が将来の可能性を狭める
服が買えないのも、塾に行けないのも、家庭の経済的な環境が原因であり、子ども本人にできないことの原因があるのではありません。

にもかかわらず、「自分だけできない」という環境に置かれることによって、子ども自身の自己肯定感は下がってしまうのです。

フローレンスのホームページ、太字大文字原文のまま)

 

  蛇足だが、上の文章で「自分だけできない」というのは言い過ぎで(まるでできないのは自分一人のように書かれているという点で)ある。

  さて、話を戻そう。要するに子供間で格差のあることが問題と言っている。ただ格差は、資本主義社会ではなくならない(社会主義は格差をなくそうとしていたが、失敗した)。つまり、子供の貧困の話は、永遠になくならないということだ。

 

大人の相対的貧困は無視されている

 ところで、大人の相対的貧困について述べた記事を、私はみつけることができなかった。 この理由は不明。

 相対的貧困の調査をしている政府の資料を探してみると、

○この10年でみると、相対的貧困率の押し上げに大きく寄与したのは、65歳以上の高齢者の増加。

○世帯類型別にみると、単身世帯、大人1人と子どもの世帯、2人以上の大人のみの世帯が、相対的貧困率の押し上げに寄与。 そのうち、単身世帯については、65歳以上の高齢者が相対的貧困率の押し上げに寄与。

 (内閣府・総務省・厚生省資料「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」部分、付録も参照ください)

 

つまり、貧困率が上がっているのは子供の貧困ではなく、大人の貧困のせいだ。ならば、日本の貧困率を問題にするなら、大人の貧困率を問題にするべきだろう。

 

まとめ

   ”日本では7人に1人が貧困に苦しんでいる”といったセンセーショナルなフレーズが、自分の肌感覚に合わなくて調べてみた。

  貧困という概念には二種類あって、相対的貧困という格差の話をしていることが分かった。この相対貧困は他国と比較できる話ではなさそうだ。また、他国の絶対貧困者と日本の相対貧困者のどちらを支援するべきかは、一律に決められそうにない。

  日本の相対貧困の支援に限定した場合、子供の相対貧困(格差)に関心が集中しており、その理由はお友達と格差があると自己肯定感が下がるため、となっている。ただし、相対貧困は資本主義社会ではなくならないため、目指す社会を描くのは難しそうに感じる(社会主義が失敗しているだけに)。

  一方で、日本の相対貧困率は年々増え続けていて、その要因は大人の貧困であるが、これに関心は集まっていない。

 

感想

  相対的貧困という概念は難しく、これが肌感覚と統計値が一致しない原因。以下のことを丁寧に考えていく必要があるように思う。

  • 絶対貧困と相対貧困のどちらの支援を重視するか
  • 他国の絶対的貧困者と、日本国内の相対的貧困者のどちらの支援を重視するか
  • 相対的貧困とは格差の問題である。どの程度の格差を許容するか
  • 格差の許容範囲は、子供と大人で変わるのか

 

付録

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内閣府・総務省・厚生省資料「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」部分