kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



日本学術会議の揉め事を深掘りした:争点は誰が会員を決めるか問題だったが、この会議が別になくてもいいんじゃない?と言う点はスルーされていた

日本学術会議は18日、政府に対し、会員選考方法の見直しなどを盛り込んだ学術会議法改正案の今国会への提出を思いとどまり、開かれた協議の場を設けるよう求める勧告をまとめた。

(産経ニュース (2023年4月19日)(sankei.com) より)

 

 日本学術会議という変な名前の組織があり、政府と揉めています。組織の会員を誰が決めるかが争点。この件、ちゃんと理解したいので、深堀りする。(分かっているとニュースを読んで楽しいから)

 

 まず、日本学術会議とは、「会議」ではなく「組織」です。これについては、日本学術会議法という法律で定められています。この法律で、面白そうなところを抜き出すと、①費用は国の税金で賄う、②日本学術会議は重要そうなことを審議して実現を目指す、③日本学術会議の会員は、内閣総理大臣が任命する(ただし候補の推薦は日本学術会議が行う)

 

第一条

2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。

第三条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。

第八条 日本学術会議に、会長一人及び副会長三人を置く。
2 会長は、会員の互選によつて、これを定める。

第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。

 

 揉め事の発端は、2020年10月5日に当時の首相の菅さんが、日本学術会議が推薦した会員候補の任命を拒否したこと。それまで、日本学術学会の推薦候補を政府は丸飲みしてきたが、初めて菅さんに拒否されて日本学術学会が反発した。

 なぜ反発するのだろう?そもそも任命権は内閣総理大臣にある。日本学術会議の主張は、

  • 学術会議法第7条に基づき、学術会議は、国の科学技術政策に関する重要な問題について、独立した意見を政府に提供することが求められている。
  • その独立性を保つためには、会員の任命について政府からの干渉を受けることのないことが必要である。
  • 内閣総理大臣が会員推薦を拒否することは、学術会議の独立性を損なうものであり、学術会議法に違反する。

要するに、日本学術学会の会員は、日本学術学会で決めるのが良いと言っているわけですね。(ちなみに「独立した意見を政府に提供することが求められている」は法律を自分に都合よく解釈し過ぎだ。)

 それに対して、政府は、日本学術会議の透明性を高めるため、会員を選ぶ際に第三者が関与する仕組みを導入することなどを盛り込んだ「日本学術会議法」の改正案を開会中の通常国会に提出しようとしている。*1

 

 ここからは、私の意見を述べる。

 法律の定めに従えば、会員の任命権内閣総理大臣にあるので、推薦候補を拒否されて文句を言う日本学術会議は筋違いだ。さらに、憲法によれば、立法の権限は国会にあるので、日本学術会議法を変えることに対して、政府に文句を言うのは筋違いだ。ましてや、冒頭書いたような政府に対して勧告を出せる立場に日本学術会議はなく、傲慢な印象を受ける。

日本学術会議は18日、政府に対し、会員選考方法の見直しなどを盛り込んだ学術会議法改正案の今国会への提出を思いとどまり、開かれた協議の場を設けるよう求める勧告をまとめた

 

 法律に反対するのであれば、民主主義に則り、有権者である国民に以下を訴え、民意を募るのが筋だ。

  • 日本学術会議は国民の役に立つこと
  • 日本学術会議の会員は、日本学術学会が決めることが、国民に一番役に立つ方法であること

 そこで、日本学術学会に代わって、彼らの功績をネットで探したのだが、みつからない。そもそも、日本学術会議って必要なのか?という議論をしなくても良いのかと思う。

 次に、「日本学術学会の会員を日本学術学会が決める」という会員任命の方法は、どうにも筋が悪い。腐敗する組織は大抵こういう決め方をする。内向きな組織は腐るというやつだ。

 

注意すべきこと

 この件、「政治が科学に介入する」的な意見を言う人がいる。このように主語を巨大化させた意見には注意が必要だ。

 日本学術会議に関わっているのは、科学者のごく一部(多分名誉教授的な老人)で、大多数の科学者に対して介入しているわけではない。

 一方で、日本学術会議(に関わるごく一部の人は)、日本の科学界を代表した意見を言えているのか?という別の疑問も浮かぶ。経済や歴史、政治などの人文系の分野では、多様な学説のあることも注意して本件を眺めることは大切だろう。これに関しては以下の記事が参考になる。

「大きなズレ」がある、日本学術会議の「世界」と実際の学問の「世界」 (2023年4月19日) - エキサイトニュース (excite.co.jp)

 

まとめ

 日本学術会議が政府と揉めている件について深掘りした。

 日本学術学会の会員は、日本学術学会で決めたいという会議側と、そうはさせたくないという政府の対立である。

 日本学術学会の会員は日本学術学会で決めたいという、彼らの主張はどうにも筋が悪い。これは腐敗する組織の常套句だ。また、そもそも、国民の税金で運営される組織が、役に立っているかが不明だ。役に立っていること、その功績に貢献したのは誰かを国民に示し、第三者により確認する必要がある*2

 

*1: NHK 報道より

*2:そこまでする必要のない大して重要でない組織だという意見があっても良いが。