2009年1月20日にバラク・オバマが第44代米国大統領に就任した。彼が打ち出したいわゆるグリーンニューディール政策をきっかけに、スマートグリッドに関する技術検討が活発に行っている。このスマートグリッド技術開発の方向性に、今回の東日本大震災が大きく影響を与える可能性がある。これについて推測を含めて考察してみる。
スマートグリッドとは何か?
実は国によってスマートグリッド開発の目的が異なる。欧州は温暖化ガス(二酸化炭素)削減のため自然エネルギー(風力、太陽光)の活用を主に目指しており、米国は貧弱な電力網をIT技術により有効活用することを目指している*1。日本は、欧州と米国へ製品を売るために、自然エネルギー活用と電力網のIT技術による活用の両方に向けて技術開発を行っている*2。
震災で学んだことと、その影響
今回の震災で学んだことは大きく二つある。原子力発電所の危険性と、停電の怖さである。
近年は、原子力発電所は安全であると思われていたが、観測史上最大の地震の前には危険であることが分かった。これは、"SAFEWARE"に記されているとおり、「レアな事故に対する危険性は過小評価される」ということだろう。
最近、オール電化住宅の人気が高まっていたが、今回の震災をきっかけに停電に対する脆弱性が議論されている。
原子力発電の是非について
まずは、原子力発電の危険性について考えてみる。ここ1、2年の世界の政策動向として、地球温暖化対策のため火力発電から原子力発電が推進されている。今回の福島原発の事故はこの原子力発電推進政策にストップをかける。ここで問題なのは、地球温暖化を防止のため、原子力をやめて火力発電に戻すことができないことである。また、原子力発電をやめると、社会に供給できる電気量が増やせないため、電気自動車の実現も危うくなる。温暖化ガス削減の有力手段の一つである電気自動車を実現するには、これまでガソリンのエネルギーで動いていた自動車を電気で動かす分の電力量が新たに必要となる。この電力をどこから調達するか、検討が必要である。
停電対策としての自然エネルギー
今回の震災では大規模に停電が発生した。今の機器は、例えガス給湯器や石油ストーブであっても、停電時には使えないものが多い。停電時に太陽電池パネルが屋根に乗っていると、昼間は結構電力を賄えるようである。このように、自家発電の手段として自然エネルギーを活用できることが実証されている。一方、欧米では、風力発電や太陽熱発電*3のように大規模な施設で自然エネルギーを電気に変換する手法が主に検討されている*4。このような発電形態では、停電対策としてはうまく活用できない可能性がある。別の言い方をすると、分散電源のアーキテクチャを考える際に、停電対策を考慮にいれる方向で検討が進む可能性がある。
まとめ
今後、原子力発電を進めるのか、止めるのか、大いに議論されるであろう。原子力発電を止める場合、地球温暖化を防止する検討が必要となる。特に、電気自動車の実現が危うくなることを考慮すべきである。
自然エネルギーに代表される分散電源は、停電対策として有効である。分散電源のアーキテクチャを検討する際に、対障害性(停電対策)も考慮した検討を行うべきである。
追記
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http://d.hatena.ne.jp/kota2009/20110401/1301605595
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