kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



魔法の言葉、スマートグリッド

 スマートグリッドという言葉がある。もともとは、電力網をよりきめ細かく制御することにより、効率の向上、停電の防止、自然エネルギーの導入を実現するものである。
 さて、今回の福島第一原発の事故以来、東京電力をいじめたい人が東京電力解体を叫んでいる。その際のロジックに使われるのが、発電・送電の分離によるスマートグリッドの実現である。例えば、「真剣に検討すべき「送電網の分離」

1)電力会社がこれまで政治力を駆使して温存を計ってきた『地域独占』を、今こそ打破するべきだ。
2)具体的には、『発電部門』と『送電部門』を分離、『送電部門』は全国を一本化した公営会社とする一方、『発電部門』は百花放斉の自由競争に委ねるべきだ。

というのが私の考えだ。

勿論、それが極めて複雑な仕事で、容易には実現出来ないものである事は、私も百も分かっている。しかし、この困難を乗り切らない限りは、淀んだ水は清冽な奔流にはなり得ず、「スマートメーター」と「スマートグリッド」に支えられた「電力供給の真の合理化」は永久に実現出来ないのではないだろうか?

 
上のロジックは、「発電・送電の分離が必要だ」→「それは困難だ」→「その困難を乗り越えると、スマートグリッドが実現できる」、という形になっている。このロジックの変なところは、発電・送電分離実現の「困難」と、スマートグリッド実現の「困難」は本来別の「困難」なんだけど、「困難」つながりでロジックをつないでいる点である。

スマートグリッドという言葉を見たら、こんな風に便利に使われていることを疑おう。

ちなみに、発電・送電分離については、以下のまとめが正しく解説していると思う。
発送電分離に関する田中辰雄准教授の整理

(1)原発事故を受け、電力事業の自由化提案が見られます。送電部門はこれまでどおり公的な独占とし、発電部門を切り離して誰でも発電できるようにするという提案です。消費者は複数の発電会社のどこかと契約して電気を購入します。回線はNTTを使いながらISPは好きなところを選べるとの同じです
(2)発・送電の分離は電力市場に競争市場を入れる事になり、競争による価格低下が期待できます。欧米で導入例が多く、経済学者の支持も高いです(たとえばhttp://bit.ly/efosXa)。ただし、市場に委ねるので電力供給が不安定化しがちで、実際、欧米では大規模停電が起きています
(3)送発電分離の賛否はここでは問いません。ただ、送発電分離が、原発問題と計画停電への対策であるかのような登場の仕方をしているのはおかしいです、今回の巨大津波は仮に送発電が分離していたとしても防げなかったし、計画停電も起きていたでしょう。原発事故と送・発電分離は関係ありません。
(4)また、送・発電分離したら脱原発になるものでもないです。たとえば英と米は送発電の分離が進んだ国ですが、米国は原発を維持し、英にいたっては温暖化対策のために原発新設を計画していました。つまり、原発を推進するかどうかは国のエネルギー政策で決まるので、送・発電分離とは関係ありません