原発全停止の可能性
原子力発電所は、定期点検を義務付けられている。この定期点検のため停止している原子炉の再稼動に地元が反対している。このまま再稼動が出来ない場合、稼動中の原子炉も定期点検のために停止させなければならず、そのうち全ての原発が停止する。
そうなると、原発の代わりに火力発電を増やす必要があり、その場合は16%(1000円)程度の電気料金の値上げとなる。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110614ddm001040086000c.html
今日は、原発全停止の場合の影響について書いてみる。
電気料金の値上げ
電気料金の値上げは、一般家庭よりもむしろ企業にとっての影響が大きい。鉄道会社やメッキ会社、金属の精錬所など、電気を多く使う業態は多い。この電気代は製造原価として計上され、利益を圧迫する。そうなると、大企業は生産拠点を海外に移すだろうし、海外に進出できない中小企業は倒産の瀬戸際に立つだろう。どちらにしても、日本の雇用は減り、失業率は増加する。
深夜電力割引の削減
深夜電力の割引というのは、発電所の発電量を調節するのが難しいという事実から生み出されたサービスである。発電方式によって、発電量の調節の難しさが異なっていて、原子力発電がとびっきり難しい。原子力、火力、水力の発電量を示した図が以下です*1。発電量の調整を火力発電で行っていることが分かります。
このため、原発が全て停止し火力発電が主になると、夜間には発電量を絞ることが出来る。その結果、深夜電力の料金割引を行う必要がなくなる。
この場合、エコキュートはどうなるかというと、タンクに湯を貯めておく理由がなくなるため、電気湯沸かし器としての機能のみが発展するかもしれない。
太陽電池の普及
原発が停止すると電気代が高くなるので、太陽電池の価値が相対的に高まる。そのため、太陽電池が普及することが想像できるが、この場合は余った電力の蓄え方が課題となる。方法は二つあり、一つ目はバッテリーに電気として蓄える方法、二つ目はお湯を沸かして熱として蓄える方法である。ただし、これらの方式には夫々欠点がある。バッテリーを使う方法は、バッテリーのコストが非常に高いことが問題である。熱として蓄える方法は、太陽電池の発電量の大きいのは夏であるが夏にはお湯の需要が少ないことである*2。
電気自動車の失速
電気自動車の燃料代が単純に16%上がると思うと、電気自動車の魅力は随分下がる。また、深夜電力料金を当てにできないと思えばなおさらである。
まとめ
原発全停止を考えると、電気料金の値上げだけでなく、料金体系の変更も想像できる。電気は産業および社会の根幹であるため、その変化は社会の広範囲に影響する。
- 作者: 池田整治
- 出版社/メーカー: ビジネス社
- 発売日: 2011/03/05
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*1:なぜか静岡ガスのページにありました。http://www.shizuokagas.co.jp/company/envi/co2/report001_detail.html
*2:余った電気で冷水を作っておいて、空調に使う方法はある。