kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



Google Scholarのマイライブラリとマイ引用の行く道

 Google Scholarは、技術論文や特許などを検索するグーグルのサービスだ。Google Scholarの新しい機能がマイライブラリとマイ引用である。
 マイライブラリは、検索した論文・特許を記録するいわばブックマーク機能である。使い方は、Google Scholarで検索した結果にある「保存」リンクを押すだけだ。自分が論文を書くときに参考文献のリストを付けるわけだが、このマイライブラリを使うと、この参考文献リストを作るのが非常に楽になる。マイライブラリに保存した文献の「引用」リンクを押すと、好みのフォーマットで引用データを得ることができる。
 このマイライブラリ機能は、ユーザにとって便利なだけでなくグーグルの新しいサービスにつながる筈だ。普通に予測すれば、論文のブックマーク件数をグーグルは知る筈だから、これを使って論文の人気のランキングをグーグルは知ることができる。論文の価値を測る尺度の一つとして引用数が使われているが、その類似の尺度として論文の価値をグーグルが発表することができる。ロイター社が学会誌の影響力をImpact Factorという値で評価している。Impact Factorの高い論文誌は良質の論文を集めることができ、良質の論文が集まるとその論文誌のImpact Factorが高くなる。こんなポジティブループが回っている。グーグルも同様のポジティブループを回すプラットフォームになれるのだ。
 また、マイライブラリ機能にブックマークされている論文からユーザの嗜好を推測し、論文検索精度を高めることが出来る。また、そのユーザへの広告に結びつけることもできる。優秀な研究者を募集している研究機関はたくさんあり、彼らのリクルーティングの費用を広告費という形でグーグルは得ることもできよう。さらに、ユーザの嗜好から、そのユーザに読むべき論文を推薦することもできる。「読むべき30の論文」的なサービスにつなぐこともできる。
 一方、マイ引用機能は、ユーザの論文を登録すると、その論文の引用状況を表示してくれるサービスだ。Google Scholarのトップページの上部にある「マイ引用」のリンクをクリックすると、ウィザードが始まる。このウィザードに従って操作するだけで自分の論文を登録できる。とても簡単だ。
 このマイ引用機能は、そのユーザが執筆した論文・文献が登録されるため、グーグルは優秀な研究者を容易にリストアップすることができる。Googl+やGmailを介してそのユーザにグーグルはアクセスすることができる。これを求人広告と組み合わせると、それをクリックしたユーザの優秀さに応じた広告料を設定することも可能だ。また、マイライブラリ機能と組み合わせれば、論文執筆者と論文読者を結び付けることができる。仮にこれをRNS(Researcher Networks Service)と呼ぶことにする。RNSでは、SNSより濃い情報が流通し、それ故ユーザ同士のネットワークも濃く・太いものいなる。RNS上では、問題と報酬を提示し、それを解く研究者を求める新しいサービスも可能であろうし、ソーシャルファンディングもより高額な資金が流通する。IETFのような技術者による標準化機能を、RNSが担うこともできよう。


 Google scholarの新機能であるマイライブラリとマイ引用は、新しいサービスのプラットフォームにつながって行きそうだ。論文・文献というニッチなサービスではあるが、Google Scholarは技術者の不可欠なサービスである。このようなニッチであるがヘビーユーザが多数いる検索サービスを強化し、RNSへと発展されば、そこには濃い情報が流れる優秀な人材のネットワークサービスのプラットフォームとなる。この優秀な人材ネットワークは、かならず社会にインパクトを与えるものとなろう。