kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



「問題解決大全」(読書猿):問題解決の手法集としてでなく、それらを分析した知見を楽しみたい

問題解決大全

問題解決大全

 

 

 

  学校を卒業すると、どうしても上手く行かないことに出くわします。

   職場で売り上げがなかなか思い通りに上がらない。どうしたら、お客は私たちから購入するのだろう?悩んでもなかなか答えはでないですよね。

  

  あなたが今一番困っている問題は何ですか?

 

  問題を解決する方法が見つからない。そんなときに役立つのが問題解決のノウハウです。ギリシャ時代の大昔から、人間は問題を解決しようと様々なノウハウを開発してきました。そんなノウハウを一冊にまとめたのが、この「問題解決大全」です。

  ただし、この本は、様々なノウハウを一冊にまとめたノウハウ集以上のものです。より高い視点でそれらを分析している。

  • そもそも、なぜ問題解決は難しいのか?
  • それぞれの問題解決手法は、どういった考えに基づいて作られているか?
  • 問題を作り出す人間の心理は何か?

 

  これらの分析は、単なるノウハウ集以上の価値がある。

  例えば、歴史を学ぶ時、724年に平安京遷都、1192年鎌倉幕府設立、1338年室町幕府設立。このように一つ一つの事実を集めて記憶しても、そこから学ぶことは少ない。

  しかし、もっと上位の視点で分析すると、役に立つ知見が得られる。平安京の支配者は皇族(つまり天皇)であった。なぜ、皇族が権力を持っていたのか?それは、科学がまだ発達していなかった時代は、天変地異を恐れ、神と会話できる特殊な能力をもった(をもっていると信じられていた)皇族を、民衆が敬っていたためです。皇族に逆らうと雨が降らず作物が育たず飢えがやってくることを、民衆は恐れていました。

  段々と農業の技術が進むと、天変地異を恐れることは減り、武士の武力を人々が恐れるようになり、武士が権力を握る鎌倉幕府へとつながっていきます。

 

  問題解決手法も、多数の手法を集めそれらを分析することで、より有用な知見を得ることができます。

 

  普通、問題があるとき人はその原因を探ろうとします。この手法として、トヨタのなぜナゼ分析が有名です。しかし、この思考は3つの意味でリスクがあります。

  • 真因が見つかったとして、それを取り除いたり・変えることができない場合がある。
  • 真因が無い場合がある
  • 問題を解いてみないと、見つけた真因が正しいかどうか分からない。

 

  仕事で成果が上がらない。売り上げが伸びない。その理由を探って行くと、扱っている商品の悪さが原因だった。あなたはそれを変えられないなら、いくら悩んでも無駄です。このように、問題の真因が変えられないものである場合が結構あります。ナゼナゼ分析では、このように変えられないものを変えようとしてただ消耗することになります。

   また、問題の原因と結果が循環している時があります。ソフトウエア開発では、仕事の納期が遅れそうになると、残業が多くなり、残業によってエンジニアが疲労します。エンジニアが疲労することで作業効率が下がり、一層遅れがひどくなり、ますます残業が増えます。そして、エンジニアが疲労して行く。このように、循環した問題に真因はありません。そもそも大抵の問題は循環しており、ナゼナゼ分析で真因をみつけられる方が少ないかもしれません。

  さらに、例え真因を見つけても、それが本当の原因なのか、その原因を取り除くことができるのかは、予め分かりません。試してみないとわからないのです。客先へのプレゼンが失敗続きで、客が斬新で突飛なアイデアを求めているのに、平凡なアイデアを自分がプレゼンしている。問題解決には突飛なアイデアを客に話すことが必要だ。そこが分かっていても、本当に自分のアイデアを話すと、突飛すぎて客が起こり出だすのではないかと尻込みしますよね。このように、真因をみつけてもそれに自信が持てないため、思い切って取り組むことは難しいものです。

 

  本書には、問題解決のノウハウが羅列しているだけでなく、それらを俯瞰して分析しており、ここに本書の価値がある。

 

おまけ

  このエントリでは、問題解決のノウハウについて具体的には書かないようにしてきました。しかし、面白かったものを二つ紹介しておきます。

 

PDPC(Process Decision Program Chart:過程決定計画図)

  問題解決案を実行するための計画を念入りに立てるのではなく、ほどほどのところで完成させて、実行に移る。新しい情報や状況の変化がある度に素早く計画を詳細化・修正していく。

  これは、問題解決の初期には情報が不足しているだろうし、問題の構造もよく分かっていないという、現実的な割り切りの思想が根底にある。世の中のノウハウ本が緻密な計画を立てることを推奨するのと真逆を言っていて面白い。

 

フロイドの解き直し

 問題は解決することと同じくらい、解決した問題を解きなおすことが大切です。これによって解決スキルを上げることができる。

 

 

著者のもう一冊の本「アイデア大全」も読みごたえがあります。

アイデア大全

アイデア大全