IPv6の普及によって、素晴らしい機能が実現できるわけでも、コストが安くなるわけでもないことは、この業界にいる者は理解していると思う*1。IPv6協議会のページを見ると、このように書かれており、ウソではないものの言葉遊びという感じである*2。
IPv4にはなかった(かつ現在求められている)機能を標準で搭載している
IPv6の機能が現実世界において価値がないためIPv6は使われない訳だが、一方でIPv4のアドレスがなくなってきている(IPv4アドレス枯渇問題)のは事実のようである。
このようにIPv6の先行きを考えるにあたり、IPv4アドレス枯渇の問題を正しく理解しておくことは重要である*3。
まず、日本においてIPv4アドレスが不足して困るかというのが、最初の論点であろう。総務省の調査によれば、日本のブロードバンド普及率は世帯数で73%、日本の世帯数は約5000万世帯なので、将来日本の全世帯が常時接続されるとすると後1500万のIPアドレスが必要になる。新たなアドレス割り当てをもらえないとして、さらに現在ダイアルアップ接続によって使われているアドレスが無いとすると、1500万世帯をローカルアドレスで裁く必要が出てくる。アラクサラのサービスモジュールは1つで1800万セッションを処理できるので、日本は新規IPアドレスをアサインすることなく、LSNでトラヒックを捌けそうである。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_000001.html
http://ascii.jp/elem/000/000/427/427129/
次に気になるのは携帯電話であるが、携帯電話も高々一億台を超える程度の数にしかならないので、LSNで捌くことができるであろう。
一方、目を日本から世界に向けると、発展途上国はアサインされているIPv4アドレスの数が少なく、人口も多い場合があるため、LSNでやっていけるかという懸念が残る。しかしながら、発展途上国の通信がその国の中に閉じる訳ではなく、米国や欧州などの情報リッチな国との通信が必須となる。欧米はすでに潤沢なIPv4アドレスを持っており、IPv4アドレスを使い続けるであろうから、発展途上国もIPv4を使わざる得ない。
やはり、IPv6が立ち上がるシナリオが見えない。
Handbook of IPv4 to IPv6 Transition: Methodologies for Institutional and Corporate Networks
- 作者: John J. Amoss,Daniel Minoli
- 出版社/メーカー: Auerbach Publications
- 発売日: 2007/12/24
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