kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?

 人間の意思決定は合理的だろうか? 合理的だとして、どれほど合理的だろうか?つまり、合理的でない判断をどの程度するのだろうか?
 ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの記した「ファースト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」は、これらの問いに答える。

登場人物:システム1とシステム2

 まず、下の写真を見て欲しい。

(https://www.flickr.com/photos/99433280@N08/12006100204/ より)この男が怒っていることが、分かるはずだ。
このように表情からその男の感情を直感によって読み取る能力が人間にはある。これをシステム1と呼んでいる。システム1は自動で動作し、止めることはほぼできない。
 次に、17×24を計算して欲しい。この答えを直感で読み取ることはできず、少し時間をかけることになる。このように時間のかかる思考を、システム2が担当している。

・「システム1」は自動的に高速で働き、努力は全くふょうか、必要であってもわずあである。また、自分の方からコントロールしている感覚は一切ない。
・「システム2」は、複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。システム2の働きは、代理、洗濯、集中などの主観的経験と関連付けられることが多い。

怠け者のシステム2

 システム2の機能は、システム1が提案する考えに許可を出すことである。しかし、システム2はシステム1の提案をチェックせずに採用することが多々ある。
 次の問題を直感で解いて欲しい。

バットとボールは合わせて千百円です。
バットはボールより千円高い。
ではボールはいくらでしょう?

頭にひらめく答えは百。百円である。
検算すると、これが間違いであることが分かる。
システム1は直感で百と答える。システム2が動いていれば、その答えを否定する。大抵は、システム2は動いていない。

判断ミスの構造

 システム1は高速に判断を行い、たいてい正しい。システム2はシステム1の答えをチェックし、採用するかどうかを決める。しかし、システム2は怠け者であるから、システム1の答えをチェックしないことが頻繁にある。こうして判断のミスが発生する。
 どんな場合に判断ミスが起こるかを、本書は整理・分類している。

判断ミスの類型

プライムに誘導される

 プライム(先行刺激)に人は影響を受ける。例えば、食べ物の写真を見せられると、スープやサラダといった単語の認識速度が速くなる。お金の写真を見せられると、利己的な行動をとりがちになる。システム2はこの誘導をチェックできない。

認知容易性 慣れ親しんだものが好き

 「鶏の体温」という言葉を何度も提示されると、「鶏の体温は44度」という言葉を信じやすくなる(44度はそれらしければ何でもよい)。
 また、下の二つはどちらも誤りだが、前者の方が本当だと答える人が多い。認知容易なため、本当だと感じるためだ。

 つまり、認知が容易なものはシステム2のチェックをすり抜けやすい。

因果関係

 人は、無関係なものであっても因果関係を見出したがる。不幸にあった人が、なぜ私がこんな目に合うのか?と知りたがる。また、因果関係を自動探索したがる。

確証バイアス

 サムが親切だと思っている人は、「サムって親切だよね」と言われるとサムに親切にしてもらった例をすぐ思い出すことができる。ところが「サムっていじわるだよね」と言われるとその例をなかなか主出せない。仮説は反証によって証明する、のではなく自分の仮説を肯定する証拠ばかり探してしまう。

ハロー効果

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。誰かを親切だと思うと、その人を正直だとも思う。つまり、一つの印象が他の印象に影響を及ぼす。

見たものがすべて

「スズキはいいリーダーになれるかな?彼は頭が良くて、意思も強い、、、、」と言われるとあなたの頭の中にはすぐさま答えが浮かぶ、Yesだ。しかし、あなたがやらなかったことを考えてみると、「リーダーの資質とはそもそも何か?」とは考えなかったはずだ。
 手元にある情報だけでシステム1は判断しようとする。

より簡単な質問に答える

 問題が難しいとき、人間はより簡単な問題にそれを置き換えて応えようとする。しかも、問題を置き換えたことに気づかない。
 例えば、「絶滅危惧種を救うためにいくら寄付するか?」という問いは、「瀕死のイルカを見た時どんな気分になるか?」という問題に置き換えて答えを探そうとする。