kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



小説『旅猫リポート』(有川浩)の感想:失くすことを恐れない猫のお話

 有川浩の小説「旅猫リポート」を読みました。これは映画化もされており、そのキャストは福士蒼汰、高畑充希、広瀬アリス、竹内結子と、かなり豪華です。

 

 あなたは、大切なものを失くして喪失感でいっぱいになったことはありますか?思い出の品を紛失してしまったとき、恋人と別れたとき、仕事を辞めたときなど、大切なものを失うことは、案外多いものです。僕は、何かを無くしたとき、悔しさや喪失感に捕らわれるタイプです。あなたはどうですか?

 この小説で、野良猫のナナはサトルに拾われ飼い猫になりますが、飼い猫の安定した暮らしを無くすことを恐れません。サトルと別れることも恐れません。この本の中で、何度も次のセリフが出てきます。 

 だから、サトルが僕を飼えなくなっても、僕は何も失わないんだ。

 ナナって名前と、サトルと暮らした五年を得ただけなんだ。

 それは、サトルに出会わなかったら絶対に手に入らなかったんだ。

失くすためには、まずそれを得ている筈で、得たことに感謝をする猫です。僕には、難易度の高いマインドセットです。

 

 考えてみれば、僕たちの生活は、何か得ることとそれを無くすことの繰り返しですよね。

僕らは旅の思い出を数えながら、次の旅へと向かうんだ。

失うことは一つの旅を終えることで、新しいものを得るために次の旅に向かう、この繰り返しが人生なのでしょう。

 

 小説中、サトルは小学校・中学校・高校と転校を繰り返し、その先々で親しい友人を得て思い出を作っていったことが描かれています。まさに、サトルは旅を繰り返していたということでしょう。

 

 小説を通して、サトルが常にいい人で、ナナは常にサトルが好きと描かれており、結婚式のセリフではないですが、死が二人を分かつまでお互いを思いやって暮らしています。そして、後半は、読みながら少し泣きました。