「カメラに訊け!―知的に遊ぶ写真生活」を読んだ。これは、カメラが趣味な人間がグダグダカメラ話をしている本である*1。カメラを愛する人が、古き良き昔話をするとともに、デジカメによって変わったカメラ人の傾向を述べている。カメラを新しくし購入したいと思っている人に一読をお勧めする。
この本では、ブランドカメラ*2が重要なキーワードである。ブランドカメラとは「一生モノ」かどうかであり、「一生モノ」であるためには、そのカメラのカタログを見て四六時中幸せな気持ちになれるかどうかが大切である。銀塩カメラの時代には、ライカに代表されるブランドカメラが確かに存在した。一方、現在のデジカメ時代では「一生モノ」という意識は存在せず。
常に次のカメラに恋しています。新製品情報だけが消費され続け、実際に登場したカメラにはもう興味はなく、さらに次のカメラの登場を待ち続ける状態。
(中略)
デジタルカメラの最大の欠点は「愛機感覚」の欠如にあります。
この言葉は耳が痛い*3。 そもそも、カメラというものは趣味のものであり、それ故、オーバースペックなものや使わない機能に憧れるのである。一方、ムーアの法則に洗われるようにシリコンデバイスの塊であるデジタルカメラの進歩は速く、愛機と思っていたものも2年も経つと時代遅れなものに感じられるのです。
では、ブランドカメラの備える資質とは何か?と考えると、ずばりユニークさではないかと私は考えます。つまり、画素数やズーム倍率のような数値スペックに表れない官能性能が必要なんだと思います。だって、数値スペックは半年もすれば新製品が出て抜かれてしまいますからね。
数値スペックを追わないという意味では、レンズも同様です。本書の中では「空気感」という言葉で表わされていますが、自分の欲しい絵作りというものが自覚されないと、高級レンズをいくつも買い続けることになります*4。一方、現在はレイトレーシング計算を存分に繰り返す計算機環境がありますので*5、高性能レンズを低コストに設計できます。すなわち、レンズの数値スペックとして重要な指標である、明るさ、焦点距離、収差の少なさにおいては、どのレンズもどんぐりの背比べの状態です。そんな中で、一生モノのブランドレンズを探すには、やはり数値スペック以外の官能性能に目を向ける必要があり、これはもはや収差がないことではなく、収差があることだったりするのです*6。
プロカメラマンである筆者の田中長徳氏が仕事で使うカメラは5万円程度のα200であることが本書で記されています。つまり、それ以上高額なカメラを買うのは、「オーバースペックへのあこがれ」を満たすためにお金を払っているということですね。それが趣味というものですが、デジカメに関してはそれが「一生モノ」につながらないところに悩みがあるのです。
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