kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



いつもの自分からはみ出す手法としてのシナリオプランニング

はじめに

 人間は習慣の動物だ。思考のクセがあり、無意識にいつもと同じことを考え、同じ行動を行う。そんな”いつも”と違うことをしようと、違う電車に乗ったり、違うレストランに行ったりする。そんな”違う”行動すらも、”いつも”の”違う”の範囲内に収まり、いつもの自分を変えることは難しい。
 ”いつもの自分”から離れるには、シナリオプランニングという手法が使えると感じている。

シナリオプランニングとは

 アマゾンで”シナリオプランニング”を検索すると、ビジネス書が多数出てくる。このように”シナリオプランニング”はビジネスの手法のひとつである。将来の計画を立てるときに用いられる。
 通常の計画立案は、現在位置から目標に至るまでの作業を書き出し、時系列に並べることで行う。ここで、見落とされがちなのは、現在位置と目標だけでは計画を立てることはできないということであり、何らかの前提条件が仮定されている。この前提条件を明確にして、その将来の変化も考慮にいれるというのが、シナリオプランニング”の考え方である。

シナリオプランニングの例

 ビジネスの例はグーグルで検索すると多数見つかると思うので、ここでは個人が家を購入する場合について考えてみる。
 家の購入を考えるとき、自分の収入と毎月のローンの支払い額から、その物件を買えるかどうかを見積もるのは従来のプランニングのやり方である。この場合、自分の収入や支出が将来(例えば30年間にわたって)変化しないという前提を置いている。シナリオプランニングでは、この前提条件を明らかにする。
 前提条件として考えられるのは、

  • 支出としては、家族構成、ローン利率、物価(生活費)、税金
  • 収入としては、給与額、その物件の中古価格、

であろう。
 支出で起きる可能性は少ないが影響の大きいものとして、家族構成の変化がある。子供が一人増えれば支出は大幅に増える。家族構成が変わったときに、その家のローンを払えない場合には売却することになる。売却後にもローンが残る場合には、生活レベルを下げるといった対処が必要となる。
 収入では、リストラ等で収入が無くなることが中程度の可能性で発生する。この場合も、その物件を売却することになろう。この可能性に対処するには、現時点から資格を取るなどして転職できるスキルを磨くことを、計画に入れておく必要がある。また、物件の中古価格が想定より下がりそうになった場合、リストラがあった際の売却が難しくなる。物件購入後も中古価格をモニタし続けて、想定以下になりそうになった時点でさっさと売却する計画をたてておくことも大切である。

シナリオプランニングの効果

 シナリオプランニングにおいて、様々な未来を想定することで予めシミュレーションすることができる。これにより、思考の幅が広がる。特に、普段自分が想定しないような良い状況や悪い状況について対策をシミュレーションすることは、考えの幅を広げる効果が大きい。
 例えば、一億円手に入れたらどうするか? そんなシミュレーションを普通はしない。宝くじが当たってあぶく銭を手にして人生を狂わすのは、こういったシミュレーションができていないためである。大切なのは、宝くじが当たる確率は低いが、これに備えることで思考の幅が広がることである。

まとめ

 いつもと違う自分になるためには、考えるうえで暗黙の前提条件を明らかにし、これを変えて将来を考えることが役に立つ。これは、まさにシナリオプランニングと呼ばれているものである。シナリオプランニングにより、いつもとは異なる前提条件でものを考え、そのシナリオでの行動をシミュレーションすることで、考えの幅が広がる。考えの幅が広がれば、その広い範囲から選択肢を列挙することができ、良い答えを手にすることができる。

おすすめの本

 ビジネス書として読むならこの一冊。地銀の生き残り戦略、発送電分離再生可能エネルギー導入で大揺れに揺れている電力会社の将来シナリオなど、ケーススタディが多く楽しく読める。

 


 読み物として楽に読める。思考の幅を広げるという目的で読むならこちら。ブログ"未来はひとつじゃない!『シナリオ・プランニング』著者ウッディー・ウェイドさんと野村恭彦さんに聞く「複数の未来の描き方」"も参考になる。

シナリオ・プランニング――未来を描き、創造する

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