kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



書籍が壊れていく

 書籍の電子化は確実に進展すると私は考えている。世間のニュースを見ていると、電子書籍を書籍の電子化と捉えている感じがする。これに私は反対する。電子書籍という言葉で想起される、紙の本がKindleのような電子デバイスに置き換わるという単純な話ではない。書籍の電子化の本質は、流通媒体が紙から解放され多様になることである。この多様性は既存のビジネスモデルを破壊する。

 具体的に考えよう。週刊少年ジャンプという漫画雑誌がある。電子化によりジャンプがネット配信されると考える人もいるが、そうはならない。ジャンプの中の「こち亀」や「BLEACH」といったタイトルが配信され、ジャンプという枠がなくなる。これは、音楽の世界で、音楽データがMP3になったことにより、電子的にもアルバムが売れなくなりシングルのみが売れるようになったことからも想像できる。このように雑誌というビジネスモデルが崩壊する。また、これまでの雑誌でまず売り出して、その後単行本でタイトルを売るというビジネスモデルも崩壊する。最初からタイトル売りなのだ。
 さらに、紙の本と比べて電子データの流通コストは圧倒的に低いため、出版社が担っていた本を世に流通させるという機能が価値をもたなくなる。「こち亀」を集英社ではなく、アマゾンが売ることも可能であるし、あるいはフレッツ光のサービスとしてNTTに売ってもらうことも可能だ。
 書籍の中で、エッセイという分野はもっと手軽で、メールマガジンになる可能性が高い。堀江貴文氏はメルマガで月に一千万円程度稼いでいたようである。他の作家も、有料コンテンツ+広告費でこれまで以上に稼げる。ポイントは、これまで出版社や書店に取られていた中間マージンがなくなること、そして広告費が作家に入ることである。むしろ広告費が作家に入ることの方が大きいだろう。
 さらに、恋空や電車男で明らかになったように、素人でもそれなりに面白い文章がかけてしまうことも大きい。紙の本では流通コストの高さから広くいきわたらなかったコンテンツが、流通するようになる。
 このように今まで書籍として認識していたものが、電子化により書籍とは異なった流通形態とビジネスモデルを形成する。この新しい流通形態・ビジネスモデルで活躍するプレイヤは、今のそれとはかなり異なっているはずだ。必要とされるコアコンピタンスが違うのだから。

追記

2011年10月20日

 米国で電子書籍の最大手アマゾンが、日本にも参入です。ついに来たかという感じ。これで、日本国内の各プレーヤーは動かざる得なくなります。ソニーなどの電子書籍端末メーカ、東芝などのスレートPCメーカ、各出版社、そしてライター。カテゴリとしては雑誌の動きが気になります。Kindle Fireで雑誌が読めるようになったため。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E3E1E29D858DE3EBE3E2E0E2E3E39F9FEAE2E2E2