kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



ビジネス本視点で読む「すき屋」の労働環境改善に関する第3者委員会の調査報告書

 すき屋の第3者委員会報告書が7月31日に発表された。それに対して、反すき屋の意見が多く出ているが、すき屋はブラック、ブラックは悪い、といった短絡的なものがほとんどに見える。
 知的複眼思考法に習って、上記報告書を別視点で解釈してみようと思う。理由は面白そうだから。ここでは、本屋さんに溢れている経営本てきな視点でみることにする。理由はやはり面白そうだから。

前提の整理

なぜ、第三者委員会が調査したのか?

 人手不足で店舗が営業できない事態が起こった。そこで、ゼンショーが店舗の労働環境改善を行うことにし、そのために第3者委員会を設置した。ということは、訴えられたとか、警察に踏み込まれたとかいう話ではなさそうです。

すき家を運営する事業会社である株式会社ゼンショー(以下「Z 社」という。)は、2014 年 2 月から 4 月にかけて、厨房機器等の施設の不具合や人手不足による従業員の採用難によ り、すき家 123 店舗(2014 年 4 月 12 日現在)で一時休業や時間帯休業の措置を取り、さら に、これ以外にも 124 店舗について 22 時から 9 時までの深夜・早朝営業を休止した。Z 社の 親会社かつ持株会社である株式会社ゼンショーホールディングス(以下「ZHD 社」という。) は、すき家の従業員の負担増が深刻化したことを重く受け止め、店舗の労働環境改善を経営 の最重要課題に設定することとした。

すき屋のミッションステートメント

 要するに、社会インフラとして24時間365日営業し手頃な価格で食を提供する、これがミッションとして掲げられている。

すき家を運営する事業会社である株式会社ゼンショー(以下「Z 社」という。)は、2014 年 2 月から 4 月にかけて、厨房機器等の施設の不具合や人手不足による従業員の採用難によ り、すき家 123 店舗(2014 年 4 月 12 日現在)で一時休業や時間帯休業の措置を取り、さら に、これ以外にも 124 店舗について 22 時から 9 時までの深夜・早朝営業を休止した。Z 社の 親会社かつ持株会社である株式会社ゼンショーホールディングス(以下「ZHD 社」という。) は、すき家の従業員の負担増が深刻化したことを重く受け止め、店舗の労働環境改善を経営 の最重要課題に設定することとした。

ゼンショーグループの理念

「我々の使命」として、「世界中の人々に安全でおいしい食を手頃な価 格で提供する。そのために、消費者の立場に立ち、安全性と品質にすべての責任を負い、食 に関わる全プロセスを自ら企画・設計し、全地球規模の卓越した MMD システム 1をつくり 運営する」ことが掲げられている。
以上の理念・使命の下、すき家も、24 時間 365 日、いつでもどこでも、お客様に身近な存 在として、安全でおいしい「食」を途切れることなく提供することによって地域社会を支え る「社会インフラ」として運営されている。

何が問題なのか?

 24時間365日営業というミッションステートメントに掲げた使命を果たせなくなったことが、問題である。

何故その問題が起きたのか?

 退職者数が新卒採用数と同等の数となり、従業員数が増えなくなった。そのため、24時間365日営業できる店舗数を増やすことができなくなった。

退職者数は 2011 年度(年度とは 4 月 1 日から翌年 3 月 31 日)におい て 103 人、2012 年度において 170 人、2013 年度において 177 人となっており、毎年の 新規採用数のほとんどを吸収してしまっており、店舗数の増加に比して在籍社員数は伸 びていない。

退職者率は多いのか?

新卒社員の離職率を業界平均(66.6%)と比べると、すき屋離職率はむしろ少ない。

厚生労働省が発表した平成25 年10 月29 日付労働市場分析レポート第23 号「新規学
卒者の離職状況(平成22 年3 月卒業者の状況)」によれば、2010 年3 月の新規大学卒業
者の3 年以内の離職率は31.0%であり、宿泊業・飲食サービス業では51.0%、新規高校
卒業者の離職状況は39.2%、宿泊業・飲食サービス業では66.6%となっている。これに
対応するのは、上記のうち2010 年入社であるが、この年に限ってみれば、ZHD 社の3
年以内離職率は47.6%であるから、業界平均よりむしろ小さいと言える。
 しかしながら、翌年2011 年入社のZHD 社新卒社員の3 年以内離職率は58.8%と増加
しており、2012 年入社については未だ3 年が経過していないものの、2 年以内離職率
45.7%と前2 年を遥かに上回る率で推移している。

分析

 24時間365日営業というのは、すき屋のミッションステートメントにて定められているので、これを最優先するのは経営として正しい(ミッションステートメント自身は、正しい正しくないの問題ではなく、経営者が自身の感じるミッションを定めるものである。これに従った経営を行うことは正しい)。しかしながら、すき屋の属する飲食サービス業では新卒の3年以内の離職率は66.6%であることを考えれば、店舗数の拡大には無理がある。その常識的には無理なことを創意工夫で克服することを、経営手腕とするならば、現場の頑張りに期待し有効な手を打たなかった経営陣は、責められる点がある。
 一方、遅ればせながら第3者委員会を立ち上げ調査を行ったことは良い方向に向かう可能性がある。課題は、業界平均を下回る退職率を一層引き下げることであり、なかなか一筋縄ではいかない。ここは、経営陣の手腕が問われる部分であり、有効な手が打てるか、それともミッションステートメントを変えるのか、注視したい。

おまけ

調査報告書を読んで、私が一番重要だと思った部分は、以下である。

Z 社(すき家)は「企業市民」として、法令を遵守した上で「24 時間、365 日営業」の実現を目指さなければならない。これが現在の社会常識であり、企業に対する社会的要請である。にもかかわらず、経営幹部は「24 時間、365 日営業」を金科玉条にした思考停止に陥り、法令を軽視した結果、重大リスクを招くことになった。「24 時間営業」は、従業員に「24 時間勤務」を要求する理由にはならない。