「統計数字を疑う」は、統計リテラシーの本であると同時に経済指標の教科書である。
数字は分かりやすいが騙されやすい。そんなことはみんな知っている。どう騙されやすいのかが問題だ。本書は、統計のクセやパターンに主眼を置いている。
すでに統計に関する解説書はたくさん出ていて、読者は書店でどの解説書を選べばいいか迷うほどだが、本書は、これまであまり顧みられることのなかった各種の統計がもつクセやパターンに主眼を置いているという点で、類書と一線を画する。
本書には統計に騙される例がたくさん載っている。この例を覚えておくと宴会の話のネタにも使える。
例の一つを紹介する。
年末商戦をご存じだろうか?12月の消費のことだ。一年の中で12月の消費が最も盛り上がる筈だが、近年年末商戦の結果は右肩下がりに下がっている。このため「今年は不況だ」などとニュースで報道される。しかし、本当にそうだろうか?実は、高齢化によりサラリーマン世帯が減り、12月のボーナスを受け取る世帯が減ったことが原因である。
この他にも、「経済効果」がどのように計算されているか、そしてそれをどう解釈すべきかなど、統計リテラシーを鍛える例が多数紹介されている。
また、景気判断の指標、GDP、消費者態度指数、鉱工業生産指数、第3次産業活動指数などの景気動向指数の説明をしている点も本書の魅力だ。難しそうに思えるって? そこを分かりやすく説明している点が本書の素晴らしい所だ。例えば、GDPとGNPの違いについて次のように説明している。なんて分かりやすいんだろう。
GDPとGNPの違いは、GDPが日本人であろうが外国人であろうが、とにかく日本国内での経済活動の結果、生み出されたものを集計するのに対して、GNPは国内であろうが国外であろうが、とにかく純粋に日本人の経済活動の結果、生み出されたものを集計するという点だ。
まとめ
本書は、統計リテラシーの本であると同時に経済指標の教科書である。数字には騙されやすい、そんなことはみんな知っていること。大事なのは、騙されるパターンを知っておくこと。本書には、統計に騙される例がたくさん載っており、勉強になるだけでなく宴会の話のネタにも使える。
- 作者: 門倉貴史
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/11/04
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