"HowからWhatへ"
スティーブジョブスがもてはやされた頃からよく聞くキーワードである。製品の性能を上げれば売れた時代から、(性能ではなく)何を製品とすると売れるかが決まる時代になったという意味である。顧客に製品という箱を売るのではなく体験を売る、そんなことを考えると技術が重要ではなくなって、ビジネスモデルが重要な時代になったと言っても良い。
研究者や博士は多数存在する。彼らから技術を得ることはできるし、学ぶこともできる。しかし、ビジネスモデルを設計できる人間は希少だ。自分で学ぶにしても、なかなか良い教材も見当たらない。ネットを検索しても見つかるのは、「アップルはユーザ体験に注力していて素晴らしい」といった後付の理屈や、「顧客満足を追求せよ」といった抽象論から抜けられない記事ばかりがみつかる。やはりビジネスモデルを設計できる人材は少ないようだ。
最近、ビジネスモデルを設計できるようになるために、これはいいと期待できる本をみつけた。それが「ビジネスモデルジェネレーション」だ。この本の優れていることは、具体的な作業からビジネスモデル設計の試行錯誤できることだ。だれかのビジネスモデルを分析するのでなく、自分のビジネスモデルを設計するには、自分で手を動かすしかない。この本が示すビジネスモデル設計のフレームワークは一見簡単だ。これがいい。すぐに手を動かすことができる。
また、本書には有名企業のビジネスモデルの例が記載されており、特にSony Play Stationと任天堂Wiiのビジネスモデルが一見似ているが本質的な違いが一点あるという分析は、興味深い。
まとめ
ビジネスモデルの設計が必要な人は、本書のフレームワークに従ってまずは手を動かして設計してみると良い。最初は簡単そうに思えたフレームワークが、実は奥深いことに気づく。一度でも自分の手でビジネスモデルを設計する作業を行えば、ビジネスモデルそのものの理解もぐんと深まり、新しいビジネスモデルの出現にも敏感になること請け合いである。

- 作者: アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール,小山龍介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 大型本
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