kotaの雑記帳

日々気になったことの忘備録として記していきます。



資本主義は、帝国主義を指向する

 「世界史の極意」の第1章を読み終えました。以下、その内容。

 資本主義とは、労働力の商品化である。そして、資本主義は帝国主義を指向する。

帝国主義(ていこくしゅぎ、英語: imperialism)とは、一つの国家が、自国の民族主義、文化、宗教、経済体系などを拡大するため、あるいは新たな領土や天然資源などを獲得するために、軍事力を背景に他の民族や国家を積極的に侵略し、さらにそれを推し進めようとする思想や政策。

(wikipedia:帝国主義より)
 
 資本主義経済においては、大が小を飲むことで資本の寡占化が進む。大資本は、国家の規制を嫌って自由資本主義を目指す。 ところが、他国の大資本との競争に敗れた資本は、自国の国家権力と結びつくことで自身の利益を伸ばそうとする。すなわち帝国主義に至る。

世界史の極意 (NHK出版新書)

世界史の極意 (NHK出版新書)

資本主義の本質

 「世界史の極意」を読んでいます。この中に、資本主義の本質とは、何かについて述べています。
 

 資本主義の本質は、「労働力の商品化」である。

自分の土地や生産手段は持っていない。例えば、日本の大卒の学生にはみな「二重の自由」があります。こういう人はどうやって生活するか。自分の労働力を商品化する。つまり労働力を売って生活するのです。

 一方、労働力の価値である賃金はどう決まるか。3つの要素で決まる。

  • 労働者が次の1か月働けるだけの体力を維持するに足るお金
  • 労働者階級を再生産するお金。つまり家族を持ち、子供を育てて労働者として働けるようにするためのお金
  • 資本主義の科学技術の進歩に合わせて、自分を教育するためのお金

 
 
 このように書くと、夢の無い話に見えます。だからサラリーマンは社畜なのだと思う人もいるでしょう。
 しかし、一歩踏みとどまって考えると、その何がいけないのかと開き直ることも可能でしょう。生活ができて、家族を養えて、勉強もできる。これ以上の何を望むのか。一度考えてみましょう。
 安定性を欲しいと思う人はいるかもしれません。日本のように労働力の流動性が低い場合、一度誰かに自分の労働力を売ると高い確率で買い続けてもらえる。しかし、労働力を買ってもらえなくなると、新しい買い手を探すことが難しい。そういう安定性をもった労働力市場なのでしょう。


世界史の極意 (NHK出版新書)

世界史の極意 (NHK出版新書)

ノウハウに注意

 カッコいい言葉を使うと、思考が止まる。
 「リーダーシップが大切」、「良くコミュニケーションするように」等々。なんだか良さそうな雰囲気に、思考が止まる。いわゆる思考停止だ。
 「ノウハウ」という言葉も思考停止を誘う。「ノウハウがありますから」、「我々のノウハウにより」、「ノウハウを蓄積」など。ノウハウがあるってどういうことなんだろう?ノウハウって蓄積できるものなんだろうか?
 どうも「ノウハウ」という言葉は、多重の意味に使われる言い訳に便利な言葉のようだ。
 一つ目は、公知 vs 秘密 という構図で、秘密の情報という意味で「ノウハウ」があるなどと言うときがある。例えば、「これは、特許として出願するのではなく、”ノウハウ”として秘匿しておきましょう」という場合、これは”秘密”にしておきましょう位の意味だ。
 二つ目は、形式知 vs 暗黙知という構図で、暗黙知という意味で「ノウハウ」があるなどというときがある。例えば、酒造りの職人が、毎日気温や湿度が微妙に変わるのでそれに合わせて加熱時間を微妙に変えていますといった、”職人の腕”と同じ意味だ。プログラマの腕と言っても良い。
 三つ目は、すごい vs すごくないという構図で、すごくない情報を「ノウハウ」と言ったりする。研究者・技術者が、プログラム書きや標準化会合に出るような仕事をしたいと言ってきたときに、それをやる理由としてよく言ってくるのが、「ノウハウを蓄積するため」という言葉だ。
 三つ目は、限りなく言い訳に近いと思う。
 「ノウハウを溜めます」なんてカッコいい言葉を使って言い訳していると、ろくな大人にならない。ただの思考停止だから。 

複数の仕事をこなすには

 僕は、二つの仕事を同時に進めることが苦手だ。一つのプロジェクトに参加して、企画を作る、メンバーを集める、進捗をチェックする。これはできる。しかし、二つのプロジェクトに参加すると、とたんに混乱してくる。大量のペーパーワークと、深く考えなければいけないこと、これらが二つ以上のプロジェクトに対して発生するとひどく混乱する。
 何故だろう? 分析してみると、僕の仕事のスタイルが原因だと分かった。
 プロジェクトには、大抵いつまでも解決できない懸案というものが一つや二つ発生する。こういうのを解決するには、深く・長く考え続けることが大切だ。二つのプロジェクトを抱えると、両方の懸案を抱えることになって、これらをうまく考えることができないのだ。片方の懸案を考えていると、もう片方の懸案が気になって集中できない。結局どちらも解決できない。
 大人として、「できません」というのも恥ずかしいので、色々試行錯誤してみた。いまのところ一番うまく行く方法は、毎朝TODOリストを書き出すことだ。朝、出社すると、一週間分のスケジュールを眺めて空き時間を確認する。そして、タスクリストを眺めて、今日やることを選ぶんだ。このとき、今日のTODOリストに項目を入れたら、大体の作業時間を見積もる。今日一日分のTODOリストを作ったら、それをどんどん「こなしていく」。昼食後には、午前の分がこなせたか確認する。もし、予想以上に時間のかかるものが有った、あるいは急な案件で作業時間が取れなかった、そんなことがあったら午後の項目を減らす。 大切なのは、「がんばる」ではなく「減らす」だった。
 既に頑張っているので、もっと「頑張る」という戦略は効果を発揮しなかった。僕の能力一杯に頑張っているので、能力を引き上げる以外にアウトプットを増やす手だては無かった。能力を引き上げるには時間がかかる。「頑張る」というのは「頑張っていない」場合以外は、無意味だ。自分の能力の中で、今日何をするか、つまりスケジューリングが大切だった。スケジューリングにおいて、有効だったのは毎朝のTODOリスト作りと、昼食後のTODOリスト修正(PDCA)だった。

楽観的に深く考える

 楽観的な人はあんまり深く考えないんじゃないかなぁ。まぁ大丈夫だろう、そんなノリで会議に臨んで、撃沈して行く。よく見る風景だ。意見のロジックが弱い。質問されると答えられない。そんな様子をよく見かける。
 悲観的な人は、細部までよく考えている。心配なんだろう。綿密なロジックがあり、様々な切り口からの質問に答える準備ができている。彼らは優秀だ。楽しそうでは無いけれど。
 マインドセットと思考の深さを2次元で書いてみる。

悲観的 楽観的
浅い検討 A B
深い検討 C D

 Aの人はただの能力部走狗。BやCは人間として普通。Dは優秀な人。楽観的だから考えた結果を、上司に提案することができる。心配でなくても深く考えるから、思考の室が上がる。社内で優秀な人をみて、こういうことなんだと思った。

戦略について基礎から考えてみる

はじめに

 「戦略」ってなんでしょうね。よく聞くんだけど、意味の良く分からない言葉のトップでしょう。

「戦略」の混乱

 Googleで検索すると、「文化戦略会議」、「『戦略的基盤ソフトウエアの開発』プロジェクト」などいっぱい出てきます。別のg具体例として、ちば戦略的デザイン活用塾の紹介を見ると

ちば戦略的デザイン活用塾

ちば戦略的デザイン活用塾は、中小企業がデザイン戦略を効果的に活用したビジネス展開をしていくための実践的な“術”を学ぶための塾です。公的機関、大学、デザイン分野専門家がさまざまな形で企業のデザイン活用をお手伝いします。

うーん、「デザイン戦略」って何でしょう?一謎が一層深まります。

 今度は、英和辞典で「戦略」を調べてみると、「戦略」の英訳は strategy あるいはplanです。今度は、strategyを英英辞典で調べると、何かを達成するための一連の行動とか、良く考えられた計画 という感じですね。

a planned series of actions for achieving something
skilful planning in general

 日本人が「戦略」と言ったとき、英語のStrategyの和訳程度の意味、つまり「よく考えた計画」という意味なのかもしれませんね。特に海外から言葉が輸入されがちな分野、例えば経営・ITは「計画」という意味で「戦略」と言っている可能性が高そうです。

戦略の定義

 wikipediaによると、wikipedia:戦略の定義について、はっきりしたものはないようです。

戦略の一般的な定義については未だ研究が途上である。ハーバード大学トーマス・シェリング教授は、戦略を勢力の適用ではなく潜在的な勢力の発掘であるとし、取引のプロセスというモデルでこれを説明した。またロジンスキー教授は戦略を「力の総合的な制御」と定義し、戦術はその直接的な運用であると論じた。つまり戦略とは「あらゆる行動の総合的な調整と最適選択」であると考えた。ただし近年では企業経営やスポーツにまで軍事用語の戦略の概念が応用されているために新しく定義され、「長期的・大局的な観点から物事を見通して行動を調整する技術」として再認識されるようになっている。[6]

 戦略の定義がしっかりしている分野は、国家の戦略、軍隊の戦略、経営における戦略、生物学における戦略、ボードゲームにおける戦略、くらいのようです。

ビジネスに関係する活動の戦略

 頑張ってネットを探していると、ガートナーのコラムでIT戦略について述べたものがありました。

ビジネスの具体的な目標にITがどのように貢献するのかを、最初に定義するべきです。

 ビジネスに関する活動、ここではIT(社内システム)戦略は、経営目標が与えられた上でこれにどう貢献するが戦略であると言えそうです。ただし、上記記事を最後まで読むと、ガートナーのIT戦略はメソッドになっておらず、経営目標を達成するためにシステム部門を知恵を絞るという精神論に終止しています。
 さて、これらを基に抽象化して考えれば、IT以外の活動、例えば研究活動や営業活動などにも、研究戦略や営業戦略も考えられそうです。つまり、経営目標を達成するために、研究部門(あるいは営業部門)がどのように貢献するか計画を立てたものが研究戦略と言われているものでしょう。そして、研究戦略を立てる具体的なメソッドはなさそうです。

まとめ

 戦争において戦略に関する理論は発達し、典型的には「敵の弱みを、自分の強みで突く」という論理が確立されました。また、経営においては、コトラーによって「他社と異なる差を自社が有する」という論理がつくられました。しかし、他の殆どの分野では、「戦略」とは「よく考えた計画」以上の意味はなさそうです。また、ビジネスにおいて、経営目標を達成するために、「他社と異なる差を自社が有する」ための「戦略」は、経営者が考えるべきものです。そして、その下位レベルでの研究戦略やら営業戦略という「よく考えた計画」を立てる論理は、いまのところ無いようです。

競争戦略からみたリストラ

 「ストーリとしての競争戦略」を読んでいます。そもそも”戦略”ってなんだろうねって所から始まって、「第2章 競争戦略の基本論理」で戦略の説明が分かりやすく書かれている。この章を読んだだけで、考えることがたくさんある。今日はその中で、日本のリストラって結構まずいんじゃないかという話。

 競争戦略には、大きく言うと2つしかない。構造的ポジショニング(SP)と組織的能力(OC)である。構造的ポジショニング(SP)は儲かることだけをやるという戦略。組織的能力(OC)は能力を高めるという戦略。
 全国区ではなく地域に根差したアイドルを目指したのがAKB48をはじめとする秋元康の戦略は、構造的ポジショニング(SP)である。歌唱力とダンスの力をみっちり鍛えた安室奈美恵の戦略は組織的能力(OC)。
 構造的ポジショニング(SP)の良い所は、戦略が当たれば割と楽に勝って行けること。ただし、楽に勝って行けると他人に知られるとあっという間に競争が厳しくなる。ご当地アイドルブームやゆるキャラブームを思い起こすとすぐに旬が過ぎることが分かるだろう。
 組織的能力(OC)の良い所は、激しい競争の中でも勝って行けること。安室奈美恵の真似を誰も真似ができないことからわかるだろう。ただし、能力を身につけるためには時間がかかる。
 ビジネスの世界では”戦略”ブームだ。アマゾンで"戦略"をキーワードに検索すると、1800件がヒットする。この大半が構造的ポジショニング(SP)にものだと思う。構造的ポジショニング(SP)は、結果が早く出る、説明しやすい、分かりやすい、の3拍子が揃っているからだ。特にアメリカ人は構造的ポジショニング(SP)が好きだ。
 リストラとは、頭の悪い構造的ポジショニング(SP)だ本来の構造的ポジショニング(SP)は、儲かるところに(会社の規模を変えずに)集中することだ。儲かるところだけ残して儲からないところを削るリストラは、規模が小さくなる。構造的ポジショニング(SP)は、本質的に旬が短いため、さらにリストラを行うことになり、どんどん会社の規模が小さくなる。だから、”頭が悪い”と書いた。”抜本的構造改革の断行”とか言って行うリストラは、たぶん頭の悪いリストラだ。

 

SWOT分析って使いづらい、、、

 コンサルタントが好きな経営分析ツールにwikipedia:SWOT分析というものがあります。最近、SWOT分析を色々やってみた感想。これって使いづらい
 SWOT分析は、シンプルなのでとっつきやすい。具体的には、内部要因と外部要因をそれぞれ二つに分類して、それらをマトリックスに並べる。

  • 内部要因:強み&弱み
  • 外部要因:機会&脅威

例えば、IT関係の個人事業者だとしたら、

  • 内部要因
    • 強み:ソフト開発経験が豊富
    • 弱み:大規模プロジェクトのマネージャ経験が無い
  • 外部要因
    • 機会: ソフト開発ニーズの増加
    • 脅威: 競合他社(ソフト開発請負業)の増加

これらを、以下のようにマトリックスに並べて、強みと機会の交点で戦略を考える(SO戦略)。

  機会 脅威
ソフト開発ニーズ増加 競合他社の増加
強み ソフト開発経験豊富 SO戦略 ST戦略
弱み 大規模プロマネ経験無し WO戦略 WT戦略

 このように簡単なフレームワークで、とっつきやすいのですが、SWOT分析をした結果出てくる戦略は、「ソフト開発経験を活かして、ソフト開発ニーズ増加という機会を獲得する」といった、SWOT分析しなくても最初から分かってるわい! 的なものになりがちです。これでは、なんのために分析をしたのか意味がありません。

 考えてみれば、”ソフト開発経験が豊富”というのは強みでも弱みでもなく、事実です。ソフト開発をするには強みですが、小説を書くには弱みかもしれません。このように、何をするか(すなわち戦略)があって初めて、”ソフト開発経験が豊富”という事実を、強みと弱みに分けることができるのです。このため、以下の三すくみに陥ります。

  1. 戦略を考えるためにSWOT分析をする
  2. SWOT分析をするために強みと弱みを列挙する
  3. 戦略が無いと強みと弱みは決められない

まとめ

 SWOT分析をしてみたら、やたらつかいづらい。google先生に事例を聞いても、SWOT分析から戦略が出た事例が出てこない。
 よく考えてみると、SWOT分析は戦略が出てこないようにできていることが分かった。

スキルとアートとビジネス

 「ストーリーとしての競争戦略」を今読んでいる。数あるビジネス書とは異なる切り口で考察がされており、この切り口の違いを楽しむことが大切に思う。
 ビジネス書は、著者が米国人であるものや、米国の考え方を日本人が書き直したものが多い。SWOT分析などのフレームワークを用いた分析手法がその典型である。米国流の考え方は、当然その文化に強く影響を受けている。その特徴は、(1)機能分割型であること、(2)Skill型であることの2点である。
 米国の会社は、営業・企画・開発・生産などのように組織が機能に分かれている。そして、働く人々もその組織の機能を強く意識している。例えば、開発部の人間は、企画部の作成した企画を実現するのが仕事だと考えており、そこに顧客の想定は無い。あくまで企画部のリクエスト通りのものをどう具体化するかを追求するのが開発部の仕事だ。このように利益を上げるという会社の機能を、ブレークダウンして営業・企画・開発・生産と小さな機能に分割し、小機能のそれぞれに役割を与える。
 この考え方の長所は、分かりやすさである。シンプルであるため、誰にでも分かる。様々な価値観をもった多様な人種の米国では、これくらいのシンプルさが必要なのだろう。また、働く人々に要求するのはアート技能ではなく、スキル技能である。アート技能は経営者(CEO)が一手に担い、その下で従業員がスキルを提供するという形式である。ここで、スキルとは教科書と練習で大抵の人が習得できる技能のことである。例えば、市場調査結果を分析する、仕様通りのソフトウエアを開発する、こういったものはスキルである。一方、アートとは、習得方法のない技能のことであり、例えば、トップ営業マンと平凡な営業マンの違いはアート技能に起因する。
 米国のビジネス書は、スキルを身につける方法を書いている。ところが、日本人はアート技能を重要と考えるので、ビジネス書を読んでもアートが身に付かないことに不安になり、何冊もビジネス書を買ってしまう人がでてくるように思う。
 本を読むときには、その本の背景にある社会哲学にも踏み込んで考えるのも大切である。

Google Scholarのマイライブラリとマイ引用の行く道

 Google Scholarは、技術論文や特許などを検索するグーグルのサービスだ。Google Scholarの新しい機能がマイライブラリとマイ引用である。
 マイライブラリは、検索した論文・特許を記録するいわばブックマーク機能である。使い方は、Google Scholarで検索した結果にある「保存」リンクを押すだけだ。自分が論文を書くときに参考文献のリストを付けるわけだが、このマイライブラリを使うと、この参考文献リストを作るのが非常に楽になる。マイライブラリに保存した文献の「引用」リンクを押すと、好みのフォーマットで引用データを得ることができる。
 このマイライブラリ機能は、ユーザにとって便利なだけでなくグーグルの新しいサービスにつながる筈だ。普通に予測すれば、論文のブックマーク件数をグーグルは知る筈だから、これを使って論文の人気のランキングをグーグルは知ることができる。論文の価値を測る尺度の一つとして引用数が使われているが、その類似の尺度として論文の価値をグーグルが発表することができる。ロイター社が学会誌の影響力をImpact Factorという値で評価している。Impact Factorの高い論文誌は良質の論文を集めることができ、良質の論文が集まるとその論文誌のImpact Factorが高くなる。こんなポジティブループが回っている。グーグルも同様のポジティブループを回すプラットフォームになれるのだ。
 また、マイライブラリ機能にブックマークされている論文からユーザの嗜好を推測し、論文検索精度を高めることが出来る。また、そのユーザへの広告に結びつけることもできる。優秀な研究者を募集している研究機関はたくさんあり、彼らのリクルーティングの費用を広告費という形でグーグルは得ることもできよう。さらに、ユーザの嗜好から、そのユーザに読むべき論文を推薦することもできる。「読むべき30の論文」的なサービスにつなぐこともできる。
 一方、マイ引用機能は、ユーザの論文を登録すると、その論文の引用状況を表示してくれるサービスだ。Google Scholarのトップページの上部にある「マイ引用」のリンクをクリックすると、ウィザードが始まる。このウィザードに従って操作するだけで自分の論文を登録できる。とても簡単だ。
 このマイ引用機能は、そのユーザが執筆した論文・文献が登録されるため、グーグルは優秀な研究者を容易にリストアップすることができる。Googl+やGmailを介してそのユーザにグーグルはアクセスすることができる。これを求人広告と組み合わせると、それをクリックしたユーザの優秀さに応じた広告料を設定することも可能だ。また、マイライブラリ機能と組み合わせれば、論文執筆者と論文読者を結び付けることができる。仮にこれをRNS(Researcher Networks Service)と呼ぶことにする。RNSでは、SNSより濃い情報が流通し、それ故ユーザ同士のネットワークも濃く・太いものいなる。RNS上では、問題と報酬を提示し、それを解く研究者を求める新しいサービスも可能であろうし、ソーシャルファンディングもより高額な資金が流通する。IETFのような技術者による標準化機能を、RNSが担うこともできよう。


 Google scholarの新機能であるマイライブラリとマイ引用は、新しいサービスのプラットフォームにつながって行きそうだ。論文・文献というニッチなサービスではあるが、Google Scholarは技術者の不可欠なサービスである。このようなニッチであるがヘビーユーザが多数いる検索サービスを強化し、RNSへと発展されば、そこには濃い情報が流れる優秀な人材のネットワークサービスのプラットフォームとなる。この優秀な人材ネットワークは、かならず社会にインパクトを与えるものとなろう。

”もう頑張っている”から考えてみる

 ”論点思考”を読んだ。
 一般に問題解決のステップは、(1)問題を課題にブレークダウンし、(2)この課題を解決する、という二段階である。この第一ステップの問題を課題にブレークダウンするという作業が中々難しい。このブレークダウンの考え方を述べたのが”論点思考”である。
 ”頑張れば出来る”、日本人はこう教えられて育っているせいか、何か出来ないときに頑張りが足らないと考えがちである。どうすればもっと頑張れるか、そんな情報がネットに溢れている。”頑張りが足らない”を出発点に課題のブレークダウンをすると、課題設定が偏るときがある。
 一度、”頑張れば出来る”という思想から離れて、”もういっぱいいっぱい頑張っている”を出発点にして課題のブレークダウンをしてはどうだろうか。例えば、

  • 学生なら、試験の点数を上げるために、苦手科目の克服が必要だと考えるのではなく、もっと教え方のうまい先生が必要だと考える。
  • 営業マンなら、売り上げを伸ばすために、訪問件数を増やすことが必要だと考えるのではなく、もっと売れる製品が必要だと考える。
  • 研究者なら、研究成果を上げるために、理論構築力が必要だと考えるのではなく、もっと研究費が必要だと考える。

 ここで思考を止めない。
 さらに、教え方のうまい先生をどうやったら見つけられるか、もっと売れる製品をどうやったら扱えるか、研究費をどうやったら獲得できるか、考える。そのための課題を設定する。こうやっていつもと違う角度で”なぜ?”を繰り返していくことも必要だと、感じる。

論点思考

論点思考

残念な論文

 厚生労働省の施策により博士課程に進む学生の数が激増している。背景には、少子化により学生の数が減るため、大学への滞留時間を増やすことで大学の経営を助けるというそろばんがはじかれているわけだた、その弊害として博士の価値が低下してしている。具体的には、すごくない博士が増えているので博士号を持っているというだけで若者の質を判断できないのだ。

その中で,近年,複数の無線ルータで構成された無線メッシュネットワークが注目されている.無線メッシュネットワークは,複数の無線ルータで構成されたマルチホップ型の無線ネットワークである.ルータ間の通信に無線を用いることで,有線を用いる場合に比べ,広範囲をカバーするネットワークを安価に短期間で構築することが可能となる.

こういう論文のまえがきを読むと脱力する。「無線メッシュネットワークが注目されている.」って、、その価値を分からずに与えられたテーマを研究しているんだなぁっというのが透けて見えるからだ。
 大学受験の時、方程式を丸暗記している学生は応用がきかない。同じ構図がここに見える。君が説いている問題は、重要なのか? きっと答えられない。 だって何故注目を集めているかわかっていないんだもの。
 論文査読をしたことのある人は分かる感覚「また、つまらない論文を通してしまった」。論文誌にも淘汰が進んでいる現在、学会も論文誌のページ数をかせがなければいけない台所事情がある。こうしてつまらない論文が査読をパスして、つまらない博士が生まれる。
 もはや博士という肩書に価値はないのだ。

前年の自分と主観評価で比較する

スターバックスに学べ」の中で最も興味深いのは、前年の自分と主観的に比較することを勧めている点だ。

自分の仕事ぶりを前年比で評価せよ

 意欲的なスターバックスの従業員たちは、自分の仕事ぶりを前年と比較評価する人が多い。
(中略)
気をつけてほしいのが、尺度には客観的で定量的なものもあれば、純粋に主観的で自分の判断一つで決まる者もあるということだ。
(中略)
自分の仕事ぶりを前年と比べるには、以下の質問に答えてみよう。

  • 前年と比べて今年度は会社の成功にどのくらい多く貢献したか?
  • 前年よりも責任を負うことが増えたか?
  • 自分の能力は会社の将来に前向きな効果を与えると、以前よりも自信を持って言えるだろうか?
  • 前年よりも多くのプロジェクトを主導、またはプロジェクトに参加したか?
  • かかわたプロジェクトは、時間、予算、戦略の面で前年よりも上回ったか?
  • 前年よりも部下の人数が増えたか?
  • 新しいスキルを学ぶために前年にどんな行動をとったか?
  • 前年と比べ、従業員として、そして一人の人間として、同僚から尊敬を多く集めているか?
  • 前年に比べ、部下や同僚の人生に多くの変化をもたらしたか?
  • 今年度は、プライベート、仕事、どちらの満足度が高いか?

 試験のある学生と違って、社会人になると自分を評価するのは中々難しい。試験の点であれば、他人と比べて自分がどれくらいの位置にいるのか分かる。一方、社会人になると自分が他人と比べてどの位置にいるのか把握する術が無い。スターバックスの前年の自分と主観的に比較するというやり方は、自分と他人を比較することはできないが、自分が伸びているのかどうかは確かに分かる。試験等しなくても、自分のことだから主観評価で十分だ。
 例えば、聞き上手になることを目指すのであれば、自分がどの程度聞き上手であるかを知ることは、それほど大切ではない。自分がどれだけ聞き上手になったかは、去年より自分が聞き上手にどれだけなったか分かれば十分だ。それならば、主観評価でできる。

質問力

 「質問力」(斉藤孝著)は、良い質問とは何かを考えさせる本だ。
 大抵の本は、オープンクエスチョンで相手に考えさせて、クローズドクエスチョンで意思を確認する、という手法を紹介している。しかし、質問を分類は、オープン・クローズの2種類だけではない。相対する相手に固有の事項に対する質問・一般的な事項に対する質問という分け方もあろう。様々な軸を紹介し、二つの軸で作られる4象限で質問のポジションを分析することで、「良い質問」とは何かを明確にする。
 大切なのは、質問のポジションを意識することだ。

質問力―話し上手はここがちがう

質問力―話し上手はここがちがう

文句しか言わない上司

 上司と話をすると、ダメ出しをされることが多く、ちっとも褒めてくれない。話すほどに、こちらの自信もなくなっていく。
 ある日部下と話をしていたとき、私が納得している事項に対して部下が何度も何度も説明を繰り返していることに気付いた。話が前に進まなくて、いやだなぁっと思いながら聞いていた。そのとき、私は部下にダメ出ししかしていないことに気付いた。
 私の心の中では部下の話の95%に納得していて、残り5%の曖昧な部分を指摘していた。これは、部下に取っては、ダメ出しされているのと同じだ。私は、95%に納得していることを口に出して伝えていないからだ。部下にとって、彼が一通りの説明を私にした後、私からダメだし(指摘)だけが伝えられているのだから、彼の心理を想像すると、私が全然彼の説明に納得していないように思えているのだろう。
 部下の説明を聞いた際には、まず納得している部分を伝えることが必要だと気付いた。指摘事項を伝えるのはその後でなければ、説明してくれた部下に無用なストレスを与えてしまっている。逆に、私が上司に説明しているとき、上司が文句しか言わないように思えても、彼はおおむね納得しており不満に思っている部分は一部だけなのかもしれない。